八ヶ岳と南アルプスが眺望できる原村
長野県原村は八ヶ岳高原のふもとに広がる人口7900人の村です。長野県は平均寿命と高齢者就業率が全国一ですが、原村はその中でも二つともトップクラスを誇っています。八ヶ岳は日本の名峰ですが、原村からは南の赤岳から北の蓼科山まで八ヶ岳連山がすべて視界に入ります。西側には甲斐駒ケ岳を中心とした南アルプスの雄姿が横たわっています。原村は「日本で最も美しい村」連合に加盟していますが、それもうなずけます。
八ヶ岳の眺望を阻害するKDDI基地局が突然建った
原村の中新田地区に突然18mの高さのKDDI基地局が建ったのは一昨年(2016年)12月のこと。驚いた地元住民は「中新田携帯基地局問題連絡会」をつくり反対活動を始めました。基地局が建った一帯は「八ヶ岳山麓景観育成重点地域」のため、県への事前の届出が必要ですが、県は「高さが20mを超えない」として承認し、原村は「村環境保全条例」をクリアしているとこれまた承認しました。連絡会は村に対し「心のよりどころである八ヶ岳の眺望を著しく阻害する」として質問状を提出しました。村条例は周辺住民に建設の影響を説明し、理解を得るよう定めているが、KDDIが村に提出した文書では「住民の理解を得ている」としています。しかし連絡会が調べたところ、「了解した」住民は一人もいませんでした。
おかしなことばかり
原村村長は当初「反対がなかったから受理した」と回答していましたが、住民が承諾していない事実がわかると「承諾は必要ない」と居直りました。明らかに村環境保全条例の趣旨に反しているのに、村はKDDIに適正な行政指導はせず基地局設置届を受理したままです。行政の中立性が保証されず、村長とKDDIの関係に不透明さを感じます。
学習会の直前に基地局は撤去された
やむなく住民は「中新田携帯基地局問題連絡会」「村政を考える会」「携帯電話基地局の電磁波を考える会」の三者共催で、5月26日(土)午後1時から、中新田公民館で「携帯電話中継基地局 どこが問題か?」と題する講演会を私(電磁波問題市民研究会事務局長大久保)を呼んで開きました。講演会は27名が参加しました。
講演会開催のチラシは新聞折り込みで周辺住民に3500枚配布されました。この講演会チラシが配布されてまもない5月17日に突然KDDIは基地局の撤去工事を始めました。はじめに18mの鉄塔を解体し、そのあとしばらくしてから鉄塔を支える数mの地下基礎鉄管を引き抜きました。村の基地局設置届の撤回の説明もなければ、KDDIの基地局計画中止の通告もない、一方的な措置です。
私は現場を見ましたが、住民の動きに危機感をもった村長とKDDIの事実上の白旗だと思っています。一刻も早くKDDIは正式な白紙撤回を住民に伝えるべきです。【大久保貞利】