東京都の5G推進策に係る公開質問状(2020.3.23東京都に)

 5G普及を強力に推進する「TOKYO Data Highway(東京データハイウェイ)基本戦略」を掲げている東京都に対して、当会、市民科学研究室、日本消費者連盟の3団体連名で、公開質問状を3月23日に提出しました。その回答が4月16日付電子メールで届きましたので、ここに掲載します。今度とも、再質問などの対応を行っていきたいと思います。


特定非営利活動法人市民科学研究室・環境電磁界研究会 世話人 上田様

この度は東京都の5Gに関する施策について、ご意見をいただきありがとうございます。いただいたご質問につきまして、下記のとおり回答いたします。何卒よろしくお願い申し上げます。

(質問1)
「TOKYO Data Highway基本戦略」スライド文書の1頁において「インターネットを介し、どこにいようとも、誰一人取り残されることなく、医療や教育などの様々なサービスを受けられる」と謳われています。一方5頁には「個人のインターネット利用率は79.8%(2018年時点。2011年は79.1%)」とあり、2011年から7年経った時点でも個人のインターネット利用率は0.7%しか上がっていません。5Gが配備されるようになったとしてもそれなりに多くの人が、インターネットに接続しないままであることが予想されます。この場合に生じるデジタルデバイドの問題(不利益・不公平が生まれること)を、都として解消する考えはありますでしょうか。またそうであるとすると、どのように解消するのかをお示しください。

(回答1)
昨年度開催していた「『Society 5.0』社会実装モデルのあり方検討会」において、稼ぐ力の強化に加え、デバイドの解消も重要なテーマとなっていました。デジタル・デバイドについては、技術の進歩により克服すべきといった考え方や、インセンティブの付与によりデジタル機器の使用に関心を高めるべきとの主張、更には行政による積極的な普及啓発が大切など様々な意見があると認識しています。都としては、子どもから高齢者まであらゆる人がテクノロジーを利活用できるよう、検討会での議論も踏まえ、関係各局と連携を図りながら、具体的取組を検討して参ります。

(質問2)
7頁に「スマートシティの推進などによる環境に配慮した都市の構築」とありますが、いわゆるスマートメーターなど新しい情報技術を導入して、これまで実際にいずれかの自治体や地域において環境負荷が減らされたことが実証された例はあるのでしょうか。あるのならそれをお示しください(期間限定の実証研究のような例は除いてお答えください)。もしないのなら、このData Highway化によって東京都において、具体的にどのような環境負荷をどの程度まで、いかなる技術によって減らすことができるのか、その見通しをお示しください。

(回答2)
スマートシティの推進などによる環境に配慮した都市の構築は、Society5.0の実現を図る上での目標となる例示です。

(質問3)
14頁に「民間&東京都で最強タッグ」とあり、日本の主要な移動体通信の事業者であるNTTドコモ、ソフトバンク、KDDI(あるいはそれに加えて楽天)のいずれかと(あるいはいずれとも)都が提携することを伺わせます。都として財政支出を行うのでしょうか。行う場合は、どのような用途にどの程度支出するのかお示しください。
(回答3)
移動通信ネットワーク網の整備はこれまで民間が行ってきており、5Gアンテナ基地局の設置に要する費用はこれまで同様、通信事業者が負担することを原則としつつ、都では、通信事業者へ都の保有する既存のアセットの開放といった5Gアンテナ基地局設置の後押しのほか、会議体の運営や5G普及啓発イベントといった施策に対して負担するなど、民間との適切な役割分担をして参ります。

(質問4)
元ヤフー社長で都参与の宮坂学氏が副知事に就任し、この「TOKYO Data Highway構想」の推進役の中心を担っていると思われますが、上記(3)の通信事業者のうちの特定企業と深いつながりがあった人物が都の行政においてそうした役割を担うことは、特定事業者への利益供与にならないのでしょうか。ならないとすれば、その公平性や透明性をどのように担保しているのかをお示し下さい。

(回答4)
宮坂副知事は長年、インターネット業界において最先端技術の効果的な活用に尽力してきた人物であり、企業経営者としての実績や、幅広い人的ネットワークを有しています。宮坂副知事のこれまで培ってきた知識や経験を、都政においてもいかんなく発揮してもらい、具体的な施策の展開につなげていき、5Gネットワークの早期構築と、それを基盤としたSociety5.0の実現に貢献してもらうことを期待しています。

(質問5)
15頁から19頁において、「都のアセットを開放し、通信キャリアによる基地局設置を強力に後押し」するための事例が示されています。東京都立大学のキャンパスを含めて、これらはすべて公共財です。東京都が、利潤を上げることを目的になされている民間の通信事業に、こうした公共財を提供するのは、これまでのいわゆる公共事業とはかなり性格を異にするものではないかと考えます。税金で維持されている公共財をこのように提供することは特定事業者への利益供与にならないのでしょうか。もしならないとお考えなら、その根拠を、具体的な事例も交えて、お教え下さい。

(回答5)
行政財産は、公用又は公共用に供する財産であるが、地方自治法第238条の4第7項において、当該財産の用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができるとされています。
この規定や東京都公有財産規則等に基づき、行政財産使用許可の手続きを経てアンテナ基地局の設置が行われています。

(質問6)
「都の保有するアセットについてフィージビリティを検証の上、開放」(17頁)とありますが、「検証」は誰がどういうチェックポイントについていかなる方法で行うのか、またそのスケジュールをお示しください。

(回答6)
基地局の設置に際しては、アセットを所管する局と通信事業者が現地で調査を行い、遮蔽物の有無や設置スペースのほか建物にかかる荷重など、5Gアンテナ基地局の設置に係る実現可能性を検証することとしています。スケジュールについては、現地調査の実施を経て行政財産使用許可の申請をすることとしており、従来の手続のとおりとなります。

(質問7)
基地局設置申請等に係る「利用手続きの簡素化」(18頁)とありますが、現状の手続等はどのようなもので、それをどのように簡素化するのか、お示しください。また、具体的に決まっていない場合は、今後誰がどのような方法でどのようなスケジュールで検討するのか、また、現時点での考え方についてお示しください。

(回答7)
これまで、通信事業者のアンテナ基地局等の設置に関する相談や現地調査の申込みは、アセットを所管する局等が個別に対応していましたが、昨年11月、戦略政策情報推進本部にワンストップ窓口を設置しました。通信事業者からの情報照会や調査意向などを一元的にワンストップ窓口で受け付けることで、通信事業者の負担軽減を図っています。
(質問8)
16頁に例示されているような個々の場所・エリアにおいて種々の基地局が設置された場合、当然、その近辺に住まう、あるいは、そのエリアを行き交う人々が電磁波を曝露することになります。都としてはそうした人々への電磁波の曝露がどの程度になると推定しているのでしょうか。あるいは、その推定は行っていないとしても、5G電波を使用するどのような状況においても、それが総務省の電波防護指針を超えない環境になっていることの保証は、どのようにして確保するのでしょうか。また、基地局が設置された場合、その近辺に住まう人が希望すれば、都としてその希望に応じて電磁波を測定するつもりはありますでしょうか。併せてお答えください。

(回答8)
電波については、人体に悪影響が生ずることがないよう、国において電波法に基づく基準により運用が図られてきたものであり、5Gの実用化に当たっても無線設備規則等の改正がなされています。これら関係法令に基づき、国において適切に対応されているものと認識しています。

(質問9)
携帯電話・スマートフォンの電波が健康影響を引き起こすのかどうか、世界中の研究者の間で議論の的となっています。この問題について都として検討する予定はありますでしょうか。

(回答9)
携帯電話・スマートフォンの電波について、国内では国が電波法令による規制を行っていることから、都として検討する予定はありません。

(質問10)
携帯電話の電波等で体調を崩す電磁波過敏症を訴える方々がいます。都民の憩いの場である公園や、日常的に利用するバス停などに携帯電話基地局を設置することは、電磁波過敏症の方々をはじめ、電磁波曝露を避けたい方々にも電磁波曝露を強いることになると考えられます。また、19頁において「5Gの重点整備エリア」に挙げられている東京都立大学に通うことになる学生のなかにも、そうした人が含まれる可能性があります。都としてこうした人々が5G導入によって被るだろう健康上の問題を検討する予定はありますでしょうか。

(回答10)
5Gを含めた携帯電話基地局等は、国が電波法令の規制基準値を満たしていることを確認した上で設置されていることから、都として検討する予定はありません。

東京都戦略政策情報推進本部ICT推進部次世代通信推進課

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