(ミニニュース)電力会社が送電線の位置情報提供を拒否

 国土地理院は紙の地形図(縮尺2万5000分の1)に代わるものとして、昨年2月からインターネット上で電子国土基本図を公開している。紙の地形図は測量に基づいて作製していたが、電子国土基本図は航空写真に、自治体や法人などから寄せられた道路や建造物の位置情報を反映させて作っている。送電線や鉄塔などは航空写真では確認しにくいため、国土地理院は昨年末までに電力会社10社に位置情報の提供を求めた。ところが、全社がこれを拒否したため、送電線や鉄塔の表記が電子国土基本図から消えた。関西電力の担当者は毎日新聞の取材に対し、「位置情報がテロなどに悪用される恐れもあり、詳細な情報は提供していない」と話した。上越教育大の志村喬准教授(地理教育学)は「送電線や鉄塔の記載は、登山などの際に現在地を確認するのに役立つ。地理や地図学習の大きな障害になる恐れもある」と指摘。日本国際地図学会評議員の田代博・筑波大付高教諭は「ネット上ではより詳細な航空写真が公開されており、時代錯誤も甚だしい」と話した。日本地理学会は、鉄塔などの情報を引き続き掲載するよう求める意見書を国土地理院へ提出した。(2012年1月30日『毎日新聞』)

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