アナログメーター存続を求める署名5370筆提出

署名を経産省の担当者に提出する東麻衣子さん(左)=4月15日経産省で

署名を経産省の担当者に提出する東麻衣子さん(左)=4月15日経産省で

 「アナログメーターの存続を望む会」(以下「望む会」)は、経済産業大臣へアナログメーターの存続などを求める署名5370筆(署名用紙への署名とウェブ署名の合計)を4月15日、同省へ提出しました。望む会は経産省の担当者に対して、電磁波過敏症の方々がスマートメーターで被害を受けている実情を直接伝え、対応を求めました。望む会はまた、厚生労働省、文部科学省、消費者庁の担当者とも会談しました。望む会は今後ともアナログメーターの存続を目指し、署名活動を続けていくことにしています。
 署名は(1)アナログ式電気メーターの提供を継続してください(2)スマートメーター導入前の明確な通知と発生する電波の説明、住民による選択権を確保して下さい-の2点を求めるもの。同会代表の東麻衣子さんが昨年2月、自宅マンションに設置されたスマートメーターにより、落ち着いていた自身の電磁波過敏症(EHS)の症状が悪化したことをきっかけに望む会を立ち上げ、署名運動を始めました。電磁波問題市民研究会を含む全国の団体、個人が協力して、昨年2月から今年4月まで全国から署名を集めました。
 当日は、望む会から東さんらEHS発症者2名と、仁比聡平参院議員秘書の高橋万里さん、電磁波研から事務局・網代と、会員Aさんの計2名が参加。経産省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課電力市場整備室のSさんに東さんが署名を手渡しました。スマートメーターにより健康被害を受けた方々が署名と一緒に東さんへ送った、深刻な被害状況などを綴った手紙のコピーなども、一緒に手渡しました。

経産省「問題があるとは思わない」
 その後、参加者とSさんとの間で約1時間にわたって話し合いをしました。
 東さんは、スマートメーターを設置されたことを知らない時点で具合が悪くなった自身の経緯を述べて「思い込みでも、気のせいでもないです。スマートメーターの電波は国の基準を守っているということですが、基準値以下でも反応する人がいることを理解していただきたい。頭痛やめまいを起こす商品を全国に設置するのはいかがなものかなと思っています。ぜひともアナログメーターを残していただきたいです。すべてのスマートメーターをやめてほしいと本当は言いたいところですが、せめて自分の家だけでも電磁波から体を守りたいのです」などと訴えました。
 これに対して、Sさんは「法令の範囲の中で守る必要がある基準にのっとったものを各電力会社が付けていくということをやっている。それが『問題あるか』と我々が問われれば、『問題あるとは思っていません』というのが答えです」「健康被害があるかないかということについては、基準を守ってやっている中で、問題があるとは思っていません」と繰り返しました。
 被害を訴えている当事者を前に「問題がない」と繰り返すSさんに対して、参加した過敏症の方が思わず「なぜですか!」と大きな声を出す場面もありました。
 「なぜアナログメーターではだめなのですか」「一例の例外も認めないのですか」などの質問にも直接答えようとはせず、「2020年代早期までに全事業所、全家庭にスマートメーターを設置するという目標を政府が掲げていて、それを踏まえて各電力会社が対応しているところです」と「壊れたレコードのように」(東さん)繰り返すのみでした。。
 参加者は、以下のことを経産省へ要求しました。
・スマートメーターで被害が出ているので基準値を見直すことと、見直しに向けて被害を受けている当事者の声を聞くことを、総務省の電波基準の担当者に伝えること
・スマートメーターを全世帯に設置するという閣議決定を見直すよう経産省内で検討すること
 経産省との会談後、経産省内の記者クラブで記者会見を行い、署名提出を報告しました。

厚労省-病名登録について
 化学物質過敏症が2009年10月「傷病名マスター」(現「標準病名マスター」)に登録されて事実上公認されましたが、電磁波過敏症は登録されていません。望む会は「電磁波過敏症を病名登録してもらうには、どのような条件が必要ですか?」との質問をあらかじめ厚労省へ提出していました。
 この日対応した、厚労省保険局医療介護連携政策課保険システム高度化推進室のY課長補佐らは、「標準病名マスターは、病院がコンピューターでレセプト(診療報酬明細書)を作成するコンピューター用のもの。MEDIS(一般社団法人医療情報システム開発センター)がマスターへの登録作業をしていて、オーソライズされている病名のほか、直近の学会で新たな疾病概念があれば、そういったものも情報収集したうえで登録していく。学会の取り組み以外にも、いろいろな所からの要望を受け付けていて、今回ご要望をいただいたもの(EHS)の研究を出典を示して要望すれば、MEDISの専門医に検討されて、認められれば登録されることになります」「そもそも医者の間で病気の概念がきちっと理解されているということが、まず大前提になる」などと説明。ウェブサイトから要望でき、MEDISによる検討結果は、要望した者に通知されるとのことでした。
 厚労省側は「標準病名マスターに登録されていない病名でも診断書に書くことは可能」「診断書に書く病名についての規制は承知していない」とも説明、守る会は「マスターにないと医師も診断書を書きずらいという面もある」旨を訴えました。

文科省-「個別に対応」
 学校へのWi-Fi導入が進んでいますが、国際がん研究機関が高周波電磁波をグループ2B(発がん性があるかもしれない)」に分類していることや、EHSの児童が安心して通学できるためにも、校内Wi-Fiを有線LANへ切り替えるよう、同会はあらかじめ文科省に要望していました。
 東さんは、自身が住む市の学校ではWi-Fiが常時接続されており、電磁波に過敏な児童がいる場合に配慮が可能か教育委員会に質問したところ「診断書に基づき配慮する」と回答されました。しかし「電磁波過敏症は病名登録されていないので診断書を得ることは難しい」と、この日、東さんは文科省に訴えました。
 文科省生涯学習政策局情報教育課のM課長補佐らは「ITを上手に使うという教育的意義の観点から積極的に施策を進め、一般教室でもPCなどを使えるようWi-Fi環境を整えている。健康被害に科学的根拠があればやめようという話になるが、今のところそういう話ではない」と説明。EHSの児童への対応については「制度として全国一律で規制することは国はなかなかできない。(電磁波以外の)その他の環境についてもそうだが、特別に支援に必要な子がいれば、各学校ないしは教室で柔軟に対応していくべき」と述べました。
 東さんが「知り合いの子が過敏症で今年入学したが学校がうまく対応してくれない。そういった場合は、文科省から指導してもらえますか」と尋ねたところ、文科省は「教職員のための子どもの健康相談及び保健指導の手引」(2011年8月)の抜粋を示し、「健康相談を希望する生徒児童は診断書がなくても、保護者や本人の話を聞き、原因や症状を把握し、学校職員が認識を共有してどういう支援ができるかを検討していくことになっている。それができていない学校があったら、こちらのほうから県の指導主事などを通じて態勢を作るように(指導する)」と説明しました。
 また、「Wi-Fiを授業で使う時だけオンにして、それ以外はオフにすることは、自治体ごとに判断でできるのか」との質問には「各学校の判断」との答えでした。
 文科省が学校へのWi-Fi導入を強力に進めている一方で、子どもの健康影響については「個別対応」のみに委ね、文科省として電磁波問題にアプローチしないことに参加者から疑問の声が相次ぎましたが、文科省は「病気があるかないかについて評価する立場になく、厚労省が過敏症について方針を出さない限り対応できない」という趣旨の回答を繰り返しました。

消費者庁-事故調への申出制度
 望む会は、エコキュートの低周波音による健康被害について調査したのと同様に、スマートメーターの安全性について調査してほしい、と消費者庁に要求しました。
 消費者庁消費者安全課のY課長補佐は、「スマートメーターについての情報は3件寄せられていますが、率直に言ってそれほど詳しく承知していませんでした。症状が出たという声を拝聴したので、アンテナを高くしていきたい」と述べました。また、エコキュートについて調査をした「消費者安全調査委員会(事故調)」について説明。事故調では委員7名が独立して職権を行使し、消費者庁に寄せられる年間約2万件の事故情報の中から、委員が重要だと思った事案について調査をするという仕組みになっていて「委員の先生のご判断になるので、委員会で取り上げられることを、ここで約束することはできません」と述べました。
 東さんは「スマートメーターは国が進めているので調査しづらいということはありませんか」と質問し、消費者庁は「消費者目線を忘れないというのが消費者庁の存在意義」などとして、そのようなことはないという趣旨の答えでした。
 また、東さんの「委員の中に電磁波の専門家はいませんよね」との質問に対し、消費者庁は、専門委員や臨時委員を必要に応じて任命すると説明。消費者が特定の専門家を専門委員などとしてリクエストできるか、との質問には「そういう仕組みはありません」とのことでした。
 消費者庁はまた、事故調に対して調査の要望を申し出る制度を紹介。申出書に必要事項を書いて事故調に提出すると、いつまでという約束はできないが漏れなく委員会にかかり、調査をするかしないかについて返事をするので、申出書を提出するよう、望む会に勧めました。申出書は数多く提出すれば良いというものではなく、1件でも厳選された情報を提出したほうが良い、とも付け加えました。申出書のフォーマットは消費者庁のウェブサイトからダウンロードできます。【網代太郎】

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