携帯電話使用と脳腫瘍リスクについて二つのメタ分析(複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析する研究)が今年(2017年)2月に査読付き論文誌に掲載されました。両論文とも、10年以上の携帯電話使用と脳腫瘍リスクの増加との間に統計学的有意な関係があると報告しています。
Nofer労働医学研究所(ポーランド)のボルトキエヴィチ(Bortkiewicz)らは、最近のメタ分析(韓国国立がんセンターのミョン(Myung)らが2009年に発表)以後に発表された新しい症例対照研究を含む24件の研究のメタ分析を行いました(1)。その結果、頭蓋内腫瘍(脳腫瘍と唾液腺腫瘍の全タイプ)において携帯電話使用10年以上で、オッズ比1.324(95%信頼区間(CI)1.028-1.704)と統計的有意なリスク上昇が見られました。
また、医科学大学院(インド)のプラサード(Prasad)らは、14件の症例対照研究についてメタ分析を行い(2)、携帯電話の使用時間が10年以上(または1640時間以上)の場合は、オッズ比1.33のリスク上昇が見られ、統計学的有意でした。
これら2論文以前に発表されたメタ分析では、ミョンらによるもの(2009年)が10年以上使用でオッズ比1.18(95%CI 1.04-1.34)、ユタ大学(米国)のカン(Kan)らによるもの(2008年)が10年以上使用でオッズ比1.25(95%CI 1.01-1.54)でした。
近年発表されているメタ分析では、携帯電話の10年以上などの長期使用により、脳腫瘍などのリスクが統計学的有意に上昇するという傾向が続いています。【網代太郎】
(1)Mobile phone use and risk for intracranial tumors and salivary gland tumors – A meta-analysis.
(2)Mobile phone use and risk of brain tumours: a systematic review of association between study quality, source of funding, and research outcomes.