細るスマホ市場、基地局共有化も 模索し始めた携帯業界!

 猫も杓子もスマホに血道を上げる昨今の日本。しかし、その裏で違った動きも出始めている。一つは、2016年12月4日付の『日経』に、NTT社長鵜浦博夫(うのうらひろお)氏に対する「基地局共有化も原資に」という見出しのインタビュー記事が載った。もう一つは、2016年8月6日付の『日経』で、「細るスマホ KDDI」「『もうからない』非通信に注力」という見出しの記事。

そろそろ基地局建設競争は限界にきた
 発端は、高すぎる携帯電話料金を「値下げしろ」という総務省からの圧力。この背景には高い携帯電話料金への国民の怒りがある。また、さすがに新聞では書かないが、基地局反対住民運動がもう一つの背景だ。
 総務省は携帯端末を大きく値上げし、通信料金を下げさせようとしている。しかしこれには消費者の反発があり、携帯会社としては腰が引ける。そこで携帯端末値上げはじわじわとする一方、通信料金を下げるために今のように会社毎に基地局建設するのでなく、共有化(共同化)してコストを下げるやり方だ。ドコモ親会社のNTT社長がこれを言い出した。鵜浦社長は「基地局共有化をKDDIとソフトバンクに(すでに)提起している」とし、これに対し「誰もノーとは言わない」と正直に語っている。
 この背景に、世界の通信会社は携帯料金頼みの収益構造からの転換を進めていることがある。すでにドコモは有料アプリなどコンテンツなどの売り上げ向上で、来るべき通信料収益の頭打ちに備え始めている。

KDDIもスマホビジネス依存経営からの脱却を模索している
 KDDIは、物販や金融といった非通信分野に今後3年間で取引額を3倍の2兆円に育てる計画に乗り出している。その背景として、田中KDDI社長はズバリ「スマホビジネスがマイナス成長に転じるのは早ければ20年頃」とみているからだ。
 全国に2500店ある「auショップ」のうち、札幌店では店の表側からはスマホ販売表示はすでに見えない。かわりに目を引くのは「住宅ローンや保険相談に乗る個室ブース」。売上高3兆5千億円のうち年間6500億円近い利益を生む携帯事業だが、スマホの買い替え意欲はやがて衰える、とKDDIはクールに見ている。
 米AT&Aが米タイムワーナー社を買収した。スマホ依存からの脱却は世界の通信大手の共通課題になっている。
 KDDI田中社長は、ライバルは「楽天」と名指ししている。ネット通信販売や電子マネーが今後のターゲットなのだ。心しなければならないのは、今後も電磁波を使った産業で生きようとしていることに違いはないことだ。【大久保貞利】

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