総務省は11月2日、5G周波数の割当て指針の案を公表しました。指針が掲げる「絶対審査基準」に基づいて審査し、点数が高い携帯電話事業者から順番に希望する周波数を割り当てるとしています。
4Gまでは通信可能となる人口カバー率が指標だったため、各社は人口密度が多い都市部から優先的に基地局を整備しました。これに対して5Gは携帯電話やスマホでの通話・通信だけでなく、いろいろな産業で活用されることを目指していることから、指針案は都市部優先とはせず、絶対審査基準として以下などの項目を挙げています。
- 全国を10km四方の約4600個のメッシュ(網の目)に区切り、全国及び各地域ブロックで50%以上のメッシュに「5G高度特定基地局(基盤となる基地局。図参照)」を認定(周波数割当て)から5年以内に配置しなければならない。
- 認定から2年後までに、すべての都道府県で5G高度基地局の運用を開始しなければならない。
- 法令遵守、個人情報保護及び利用者利益保護のための体制整備の計画を有すること。
審査基準を人口ではなくメッシュに対するカバー率にすることは、前の記事で報告したヒアリングの際に携帯電話事業者が総務省へ提案した通りとなりました。「需要がある」と判断されれば、人口が少ない地方でも早期に5Gが導入される可能性があるわけです。
その一方で5Gが必要な産業がどれだけあるのかという疑問もあります。地方における5G利用として各社は、トラックの縦列走行(先頭車のみ運転手がいて、無人の後続車は5G電波経由で追随)、建設機械の遠隔操作、道路やトンネルなどの安全監視、遠隔医療、IoTで収集した温度・湿度・日照などのデータに基づく農作業などを挙げていますが、技術面だけでなく採算面も含めてどれだけ現実味がある話なのでしょうか。さらに総務省は「地方発の5G利活用アイデアコンテスト」を10~11月に自治体、大学、企業、個人などを対象に募集しました。5Gを何とか地方のビジネスに結びつけたいと国も躍起になっています。
指針案について総務省は12月3日までパブリックコメント(意見)を募集しています。絶対審査基準に「基地局設置にあたっては事前に情報を公開したうえで周辺住民の同意を得なければならない」という項目を加える、など、皆さんも意見を出してみてはいかがでしょうか。【網代太郎】