スマートメーターで東電PGと交渉 料金急騰の理由、通信部はずしたときの検針方法 すべて回答拒否

当会の要求、質問に回答する東京電力パワーグリッドスマートメーター推進室の担当者ら(手前の5名)=2021年12月24日、同社で

 スマートメーターについて当会と東京電力パワーグリッド(東電PG)との話し合いが2021年12月24日、同社で行われました。当会の質問は大部分が回答拒否、当会の要求はことごとく拒否で、東電の相変わらずの市民軽視の姿勢に怒りを覚えました。
 当会と東電PGの話し合いは2019年11月以来、約2年ぶり。コロナ流行の影響とは言え、間が空きすぎてしまいました。当会からは大久保事務局長と網代の2名が参加。東電PG側はスマートメーター推進室企画グループ・Nマネージャー(前回のSマネージャーから交代)ら5名。11月5日付で提出した要求書(会報前号掲載)の項目に従って進めました。

「個人情報」という詭弁

 要求1 東京新聞報道によると、スマートメーター交換後に、電気料金が2~8倍に跳ね上がった需要家が複数います。その原因について、前回2019年11月に御社スマートメーター推進室のご担当者と面談した際は、原因不明とのご回答でした。その後、原因が分かっておりましたら、お示しください。

 Nマネージャーは「お客さまとのやりとりについては、当社の個人情報の取り扱いにより、回答を差し控えさせていただいく」と、回答を拒否しました。私たちはあきれ果てて、「お客とのやりとりをきいているのではなく、原因を尋ねている」「火災の原因は公表しているのに、どこが違うのか」などと追及しましたが、N氏は壊れたレコードのように同じ答えを繰り返すだけでした。
 この件について、2年前の前回のときも、東電PGは「個人情報の取り扱いにより具体的な回答は控えさせていただきたい」と回答。私たちが「ふざけるなと言いたい。たとえば、自動車に欠陥があって事故が起きて、どこのだれが亡くなったというのはプライバシーだが、欠陥自体はプライバシーと何の関係もない」などと抗議した末、「答えられるか答えられないか、今、はっきり言えません」と、回答を修正しました(会報第122号)。
 それを踏まえて、2年もたった今回は何らかの中身がある回答があるものと私たちは予想していました。東電PG側のこの姿勢は許しがたく、この日の話し合いは約1時間20分でしたが、その約3分の1の時間を、この「要求1」だけで費やしてしまいました。
 次回も同じ質問をするので、回答内容を再検討することを、東電PG側に了解させました。

焦げたのは火災ではない?!
 また東電PGは前回と同様、今回も「検定を合格したものを設置している」という、言い訳にもならない言い訳をしたため、「検定を合格したメーターで誤検針があるかもしれないことこそが問題。検定を合格したスマートメーターから火災も起きた」と追及すると、東電PG側は首をひねっていました。挙げ句、N氏は「基板のあれですかね。火災じゃないですよね。焦げがあったっていう」という耳を疑う発言が。当然、東京都消防庁などは、施工ミス(ねじ締め不足)だけでなく、一部の不良品スマートメーターによるものも火災として処理しています。自分たちが起こした事故を過小評価するクセがいつまでも抜けない会社が、いまだに原発を運用していることは、つくづく恐ろしいです。

「火災は2019年が最後」

 要求2-1.消費者庁の事故情報データバンクシステムによりますと、以下の通りスマートメーターから出火する火災が起きています。
 ・2020年4月原因を調査中3日 東京都
 ・2020年11月2日 神奈川県
 ・2021年2月18日 東京都
 ・2021年6月8日 埼玉県
2019年以降、上記以外にも発生していましたら、いつ、どこで発生したか、お教えください。
 2-2.それぞれの火災の原因と対策について、お示しください。

 N氏は、同社と消防との調査の結果、スマートメーターを原因とした2019年以降の火災については現時点で2件(2019年1月7日東京都、2019年1月11日茨城県)で、ネジの締め不足が原因と説明。再発防止策として、2件に携わった作業員が施工したスマートメーターのすべてに増し締めを行ったうえ、他のスマートメーターについても作業員が他の理由で作業した際についでに増し締めを行っていると述べました。さらに工事会社に対して研修の機会を通じて指導を徹底しているとのことでした。
 要求書に挙げた2020年~2021年の4件の火災について、N氏は「確認したところ、消防の調査の結果、スマートメーターを起因とした火災ではないと判断されている」と述べました。スマートメーターが原因でなければ何が原因か、との質問に対しては「一般論で言えば落雷の影響など」との回答でした。
 また東電PGの別の出席者が「事故情報データバンクシステムを見たら、一部は原因の記載があった」と発言。そこで筆者(網代)が帰宅後に改めて同システムをチェックしたところ、4件のうち神奈川県の1件だけ「製品に起因する事故ではないと判明」との記載がありました。2020年4月の東京都の火災は「原因の調査を実施したが特定に至らなかった」と記載。埼玉県の件は「原因を調査中」で、残りの1件は原因についての記載がありませんでした(1月22日現在)。
 先に見た通り「焦げたのは火災ではない」と、悪いことはなかったことにしがちの東電だけに、もしかしたら「原因不明または原因調査中の火災は、スマートメーターが原因の火災ではない」という社内処理を行っているのかもしれません。

「セキュリティ」たてに回答拒否

 要求3-1.経済産業省資源エネルギー庁が、スマートメーターのオプトアウトを容認する方針を示しました。一方で、本年10月24日付『東京新聞』は、御社が「通信部」を外したすべてのスマートメーターから、30分ごとの電力使用量データを取得していると報じました。この報道は事実ですか?
 事実である場合、
 3-2.30分ごとの電力使用量データの取得を始めたのは、何年何月からですか?
 3-3.30分ごとの電力使用量データを取得する方法を詳しくお教えください。電波を使う場合は、その周波数、出力、通信時間をお示しください。
 3-4.30分ごとの電力使用量データの提供を望まない需要家からは、データを取得しないでください。
 事実でない場合、
 3-5.事実と違うのは報道のどの部分なのか、そして、事実としてはどうなのか、お示しください。

 N氏は、報道について「通信部を外したスマートメーターの全数から30分ごとの電力量データを取得しているのは事実」であると回答。
 時期は電力小売自由化の2016年4月からであり、すなわち通信部をはずした場合は、はずした直後から1カ月に1回、30分データを取得しているとのことです。
 取得方法については「セキュリティ対策に万全を期す観点から差し控えさせていただく」と、これも回答拒否。当会が「スマートメーターのオプトアウトを希望している人の多くは電磁波を気にしている人が多いので、電波を使っているかどうかだけでも教えられないのか」と尋ねましたが、N氏は「セキュリティの対策の万全を期したい」。「通信部が付いているスマートメーターが電波を利用していることは公表されているのに、なぜ通信部を外した途端、情報公開の範囲が狭まるのか」「プライバシーやセキュリティを侵害しない範囲でできるだけ情報を開示すべき」などと追及しても、東電PGは壊れたレコードでした。
 昨年10月24日付『東京新聞』は、通信部を外したスマートメーターからデータを取得する場面を「毎月ほぼ決まった日時に、東電グループの制服を着た検針員が来る。事前に連絡はない。(略)作業自体は5分程度で終わる。ドライバーでメーターのねじを緩めてふたを開け、計量部に特殊なアダプターを接続。手元でタブレット端末を操作し、データを取っていく」と報じていました。

「30分値をとらなければならない法令はない」とエネ庁は言っているのに
 「30分ごとの電力使用量データの提供を望まない需要家からは、データを取得しないでください」という要求に対して、N氏は「30分計画値同時同量制度[2]に基づいて、30分ごとのデータが必要なので、取得していきたい」と回答。当会が「オプトアウトを求める人で一番多い理由は電磁波だが、その次に多いのはプライバシーの問題。エネ庁(資源エネルギー庁)が認めたオプトアウトが骨抜きになってしまう」と指摘すると、N氏は「国のほうが、それ(30分データの取得)はやらなくていいと言ったということか」と質問。当会は逆に「国のほうで、需要家の希望に応じて30分ごとのデータを取らなくてもいいと決まれば、それに従うということか」と尋ねたところ、N氏は「審議会の中で、そういうことになっていくのであれば、それはそれで対応は進めて行きたい」と述べました。私たちは「国が決めたことに従うというだけではなく、事業者として、少数派の需要家の意思も尊重するという姿勢が必要」と指摘しました。
 また、九州電力などが通信部を外したスマートメーターから30分ごとのデータを取得していないことについて尋ねると、N氏は「他社について回答すべき立場でない」と回答。「すべてのスマートメーターからもれなくデータを集めなければ同時同量ができないわけではない」との私たちの指摘に対しては具体的な反応がなく、N氏は担当者なのにスマートメーターの仕組みについてあまり詳しくないのかなという印象を筆者は持ちました。
 後日(1月21日)、エネ庁のG電力・ガス事業部政策課電力産業・市場室長補佐に電話して、東電PGの主張について見解を尋ねました。G室長補佐は、2021年9月に行ったエネ庁話し合いのときの担当者です(会報前号参照)。筆者は「東電PGは制度に基づいて30分ごとのデータの取得が必要であり、国が取得しなくて良いと決めればそれに従うと言っているが、そのような制度はあるのか」と質問。Gさんは「国の制度や法令はない」と回答。すべてのスマートメーターからデータを取得しなくても同時同量は可能であるという筆者の見解にも、G氏は同意しました。

追加料金については国の結論に従う

 要求4.オプトアウトを選択した需要家から追加料金を徴収しないでください。

 N氏は「国の審議会等での決定に基づいて対応していく」「追加料金を取るか取らないかも含めて含めて(国と)調整をしていく」と回答しました。全国の10送配電事業者へ質問した時の回答(会報前号参照)と同じ回答でした。
 エネ庁のG室長補佐に1月21日に確認したところ、現在は次世代スマートメーターのセキュリティと仕様について議論している段階(この会報の次の記事参照)で、オプトアウトについては現在のところ議論されていないとのことでした。

「アナログメーターは製造が終了したので」

 要求5.オプトアウトの際、希望する需要家にはアナログメーターを設置してください。

 N氏は「アナログメーターは製造が終了しているので、新規の調達ができないということになるので、提供していない」。当会は「生産が中止されたのは電力会社が発注しないから。製造中止を理由にするのは本末転倒」と批判しました。
 当会からは、このような頑なな態度ではなく、もっと前向きに、誠実に対応してほしいと、N氏ら担当者に念を押しました。【網代太郎】

[1]電力は貯蔵が困難であるため、需用と同じ量を供給する。これを「同時同量」という。事前に計画した30分ごとの供給量と重要量に基づいて需給量を一致させる仕組みのことを「30分値計画値同時同量制度」という

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