東電、中国電はすべて
東北電、中部電は一部
スマートメーターの通信部を外した場合でも、一般送配電事業者(電力会社)が、メーター本体内に記録されている30分ごとの使用量データを検針時に取得していると、東京新聞が10月24日に報じました。30分ごとのデータを提供したくないという理由からスマートメーターをオプトアウト(拒否)したいという需要家(電力消費者)の訴えに応じて通信部を外していた場合は、オプトアウトを有名無実化することになるので、問題です。
東京新聞が事業者10社に取材したところ、通信部を外したスマートメーターについて、以下の通りでした。
- すべてのメーターから30分ごとデータを取得=東京電力、中国電力
- 昼と夜、時間帯によって価格に差があるメニューを選んでいる消費者からは取得するが、それ以外は目視で検針=東北電力、中部電力
- すべて目視で検針=九州電力
- スマートメーター拒否の消費者にはアナログメーターを取り付けているので、データを取得していない=北海道電力、関西電力、北陸電力、四国電力、沖縄電力
データを取得する方法について記事では、都内の60代男性会社員の証言として、以下のように伝えています。「毎月ほぼ決まった日時に、東電グループの制服を着た検針員が来る。事前に連絡はない。物音に気が付いて外に出ると、すでに作業を始めている。作業自体は5分程度で終わる。ドライバーでメーターのねじを緩めてふたを開け、計量部に特殊なアダプターを接続。手元でタブレット端末を操作し、データを取っていく」。この男性は「電気料金を請求するためなら、30分ごとの細かいデータは必要ない。私生活に密接に関わる情報であり、プライバシーの侵害では」と訴えています。
記事は、別の都内の50代男性に届いた「電気のご利用実績レポート」を紹介しています。「家電別電気料金トップ5」という項目に、直近1年で自分が何に電気を多く使ったのかが示されていました。照明、冷暖房機器、冷蔵庫、テレビ・オーディオなど、家電ごとの電気料金が1円単位まで載っていました。それぞれの電気の使い方に特徴があるため、人工知能(AI)で推計しているとのことです。「『省エネに役立てて』というつもりだろうが、やっぱり、気持ちいいものではない」とこの男性はコメントしていました。
記事にはまた、宮下紘・中央大学教授(情報法)による以下のコメントも掲載されていました。「電力データは帰宅、食事、入浴、就寝と、家の中の私生活が丸裸になる情報だ」。電力使用量データは本人の同意があれば来年4月から企業に提供できるようになります(この次の記事参照)が、宮下教授は「消費者にどれだけ理解をさせて、同意をとるのか。同意した本人が『こんな使い方をされるとは思わなかった』という問題が起こりうる」と懸念しています。
東電と12月に会談へ
スマートメーターの本体には30分ごとのデータを45日分記録できることから、通信部を外してもこのデータが取得される危険性は当会も認識していました。しかし、東電は当会に対して、「通信部を外したら2度と付けない」と言い、某メーター製造会社は「通信部を外したら通信はできない」と述べていたので、目視で検針しているのかと筆者は思っていましたが、検針のたびにカバーを外して専用装置を付けてまでデータを取っていることは想像できませんでした。東電へきちんと確認しておけば良かったと思いました。
この問題が明らかになったこと、また、コロナもあって、前回、東電の担当者と面談してから2年もたってしまったことから、当会は11月5日、東電へ要求書を提出しました。東電の担当者から「立て込んでいるので時間がほしい」との連絡があり、12月下旬に会って回答を聞き、交渉を行う予定です。【網代太郎】