住環境の電磁波の安全性をめぐって ロシアのラジオ番組より

大井靖子さん(会員、東京都)

 この記事はロシアのラジオ・スヴァボーダ(*)のインターネット版によるもので、内容はアンケート調査、イギリスのNGO「健康保護機関」マイケル・クラーク教授と回答者との対談、リスナーの質問などから構成されています。質問には電子レンジ、冷蔵庫、送電線、BSアンテナ、ヘッドフォンなどさまざま。中には息子が買ってきた愛玩用の白うさぎを電子レンジのそばの籠に入れておいたら2週間後に死んでしまったが電子レンジが原因なのだろうかという質問も寄せられています。
 放送されたのは2006年11月ですが、日本にはない試みですのでご紹介することにします。なお、ここで取り上げたのは番組内容の一部です。
 リスナーの質問に答えるのはロシア非電離放射線防御委員会副代表で、2015年、電磁波の規制強化を国連やWHOに提言した世界19か国の科学者の一人、オレグ・グリゴーリエフ教授。司会のマリーナ・カティスさんはジャーナリストで、ロシアのエコロジー運動の2004年度の「緑の人」受賞者。


 カティス:電磁波問題で特に重大だと思えるのは携帯電話供給システムですが、基地局がそこかしこの住宅(モスクワのような大都市ではたいていが中層・高層集合住宅-訳注)の屋上に見られますね。
 グリゴーリエフ:ええ、とても多いですね。
 カティス:基地局の影響を受ける範囲内にあるのが最上階の人たちだとしたらどうしたらいいのでしょう?
 グリゴーリエフ:私たちもよく住民のみなさんに説明するのですが、屋上に基地局のある建物の住人よりも、その周囲の建物に住む人たちの方がより危険です。というのはメインビーム(指向性)は周辺の建物に向かって放射しますから、周辺の建物に住む住民に危険が待ち受けているのです。基地局のある建物の住人が危険に曝されるのは、機械設備のある階や屋根裏に行くときです。
 何といっても危険度の高いのは、アンテナが無数に建つ大都市モスクワです。どんな場合に危険かと言いますと、それは建物の住人が(清掃員など外部からやってくる人もそうですが)アンテナの設置してある屋上に上がったときです。たいていは屋上に自由に出られ、しかも何の警告も表示されていません。そこでかなり高い電磁場の影響を受けることになります。私たちのデータによれば、アンテナのある建物の屋上の電磁場は最大許容密度の10倍を超える場合があります。これはたいへんな問題です。
 カティス:具体的にはどういうことですか?
 グリゴーリエフ:1回だけなら健康な成人には影響はないでしょう。しかし、長期にわたって影響を受けると、かつては「電波病」と呼ばれたものに進行する恐れがあります。最初は中枢神経系に機能障害が起きます。生体には心臓血管系や内分泌系、また生殖系に関わる、いくつか重要なシステムが存在しますが、これらのシステムは比較的、高レベルの電磁場の影響を慢性的に受けると被害をこうむる可能性があります。ですから最大許容密度の10倍というのは非常に危険なレベルです。
 カティス:携帯基地局の作業工事で屋上に何回も上がったり、その他の設置場所に出るなど高レベルの電磁波のゾーンに出ざるを得ない作業員はどうしたらいいのですか?
 グリゴーリエフ:衛生規則に現場の登録と規則が定められていますが、基地局の作業工事を行うときは電源を切らなければなりません。また、こうした高レベルのゾーンはすべて囲わなければなりません。規則が守られているかどうかという問題がありますが、私たちの経験では、きわめて珍しいケースでは守られています。
 もう一つ私が心配なのは屋上に出るのを好む人たちのことです。少なくともモスクワでは特に夏の時期、大都会の真ん中で日焼けしたいと思ったり、景色を楽しみたいという人がいます。そうした人たちには最大級の危険が待ち受けています。
 また、基地局の下に住む人たちはしばしば心理的危険に曝されます。「電磁波恐怖症」として分類される病気がありますが、「電磁波恐怖症」は実際にそうした建物の住人に認められます。症候学ではこうした人たちが現実に影響を受けているかのように記述されています。こうした現象が最初、スペインで観察され、記述されたことから学術文献には「スペイン症候群」という用語まであります。しかし、電磁波の強度はそれほどでもありません。原因が弱い電磁波にあるのか、心理的影響(電磁波恐怖症)なのか、現在のところ科学的には究明されていません。
 カティス:住宅の近辺に基地局がある人びとに関して言えば、実際に電磁波の被曝の危険に曝されているということですね?
 グリゴーリエフ:これらのことは消費者の権利保護と安全のための連邦監督局(**)が管轄しています。基地局を稼働させるときは測定が義務づけられています。きちんと監視されているか否かという問題がありますが、それぞれの地域で解決が図られています。
 ええ、危険は常に潜んでいます。技術的欠陥に関連した潜在的な危険性は常に存在します。

オレグ・グリゴーリエフ

オレグ・グリゴーリエフ

 カティス:モスクワのビクトルさん、こんにちは。
 ビクトル(リスナー):こんにちは。お伝えしたいことと質問があります。職業は電気の修理技師です。この番組にとても興味があります。最近、私はいろんな修理工場で働いているのですが、冷蔵庫や電子レンジやテレビなどに電磁波許容レベルを大幅に超えているものがあります。私は特別な装置で測ってみたんです。グリゴーリエフ教授、この問題に取り組んでみるおつもりはありませんか? 正直言って、最近は安全な機器にお目にかかったことがないのです。
 グリゴーリエフ:難しい問題ですね。基準値が不変なものでないことはご存じですね? この20年間に2回、変更されました。現在、出回っている家電製品は初期の段階のものです。かなりの量を放射します。しかし、その後、特別な防護策が組み込まれるようになり、ほぼ解決しています。
 電気製品の衛生基準をもっと厳しくとおっしゃるなら、私たち学者ではなく、むしろ政治家や経済人に向けたらいかがでしょう?公平に言って、ロシアの電磁場基準指数は世界でも特に厳しいのです。外国の産業界からは軽減するようにと、ある種の圧力を受けているくらいです。そのため学者として私たちはかなり複雑な立場に立たされています。

 カティス:モスクワのリュドミーラ・ニコラエヴナさん、お待たせしました。
 ニコラエヴナ(リスナー):よろしくお願いします。隣りで改築工事をしたとき、玄関に家中の電気器具のスイッチを操作できる計器盤を取り付けました。彼らは家を留守にするとき、スイッチを切って出かけます。計器盤は壁を隔てて私のベッドの位置にあるのでとても心配です。体に害はないのでしょうか?
 グリゴーリエフ:お宅の電磁波の状態を調べることをお勧めします。消費者の権利保護と安全のための連邦監督局の地域センターに依頼すればいいのですよ。住民の衛生と疫学上の安全に関する法則に基づいて無料で測定してくれますよ。ぜひやってみてください。
 カティス:やはり危険があるということですか?
 グリゴーリエフ:ええ、潜在的にあるということです。

 カティス:モスクワのナタリヤ・ミハイロヴナさんから次のような質問が寄せられています。「最近、私たちの住宅はケーブルテレビやインターネットなど電線でがんじがらめです。私のところではラジオ波受信機に電波障害が起き、絶えずピーピー鳴ったり、爆弾が落ちてくるような音がします。どうしたら避けられるのでしょうか? 誰に頼んだらいいのですか?」
 グリゴーリエフ:ピーピーという音を避けるためには原因を突き止めなければなりません。体のことを心配する前にまず専門家に調べてもらいましょう。電線の数と放射量は必ずしも一致しません。
 カティス:消費者の権利保護と安全のための連邦監督局はどんな依頼も受けつけてくれますか?
 グリゴーリエフ:ええ、住民から申請があれば電磁波の発生源の調査と検査を無料で行うことが義務づけられています。

衛生と疫学センターのスタッフによる電磁波の測定

衛生と疫学センターのスタッフによる電磁波の測定

 カティス:次はサンクト・ペテルブルグのアナスタシア・ゲオルギエヴナさんです。こんにちは。
 ゲオルギエヴナ(リスナー):こんにちは。私たちのケースはよくあるケースです。私たちは16階建ての16階に住んでいます。屋上には3基、基地局が設置されています。その上、私たちの住居の真上の屋根裏には機器が置かれています。私の見るところでは送信機は9個あります。住人はみんな具合が悪くなったと言っています。送信機の一つは夫の母の部屋の窓の上の方に吊されています。広場の向こうの住宅もわたしたちと似たような状態にあります。
 私は最近、結婚して夫の住宅に越してきましたが、すぐに健康状態が悪くなりました。わたしはまだ若いので、心配です。公式にはすべて基準値の範囲内にあるという返事をもらっていますが、異議を唱えることはできないでしょうか?
 グリゴーリエフ:誰がどんな回答を出したのかわかりませんが、あなた方のケースでは総合的検査が必要ですね。それも自主的な検査が必要です。つまり、権威ある、資格をもつ独立した団体に依頼することです。サンクト・ペテルブルグにはそうした団体があります。ニキーチナ・ワレンチーナ・ニコラエヴナ教授はたいへん有名な専門家です。この種の検査に熟達しています。

*ラジオ・スヴァボーダ(自由) 短波、AM、FM、インターネットによる国際非営利ラジオ放送。

**消費者の権利保護と安全のための監督局 11万人の専門家を擁する機関。電磁波関係の住民からの訴えは地域の監督局で検討された後、地域の衛生と疫学センターへ送られ、専門家の協力で測定が行われ、その結果は監督局に伝えられ、適当な対策が講じられる


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