リニア 山梨県内各地を訪ねる

 正月気分もどこへやらか消えた2017年1月28日、山梨県在住で、反対運動をしている知人の案内で、リニア中央新幹線によって影響を受ける山梨県内各地を訪れた。
 前号でも既報の通り、山梨県では、既に実験線が開通している。また全線の地上区間40㎞の内、県内地上区間は27㎞と一番長いことから、被害が顕在化しやすいと言える。ある意味最前線とも言える訳だが、それ故に問題があっても「ここまで出来たのだから、どうせ出来てしまうのだろう」というムードも否めないそうだ。しかし、粘り強く異議を唱えている人たちも存在する。

冬にまったく日が当たらない
 まずは、笛吹市御坂町を通るリニア実験線直下で、北側に自宅がある方を訪れた。当日は、1月下旬にしては暖かい気候であった。その場所に行くと、実験線の構造物で影になる部分だけ雪が溶けていない。そして肌寒い。リニア中央新幹線は、東京と大阪を東西に結び、なるべく直線で走るため、概ね太陽の軌道と重なっている。そのため、地上部分に沿って東西に延びている影が、季節によってちょうど建物にかかってしまうのだ。また、実験線の真下に上黒駒というバス停があったが、ここに漏洩している磁場の影響はどのようなものだろうかと気になる。

日光を遮る笛吹市御坂町の実験線

 住民の方にお話を伺うことができた。お話によると、太陽の傾きで9月頃から段々と実験線の影が伸び始め、なんと11月半ばから1月半ばまでは、建物に全く日が当たらない状態になってしまうそうだ。今年は1月20日より徐々に日が当たるようになってきたが、影は2月頃まで続くのだという。夏が過ぎ、冬が近づくと日陰が段々と増えるのが恐ろしく、精神的に追い込まれる感じがするとのこと。
 玄関から実験線を見させていただいたが、太陽は顔を出していない。とても寒いので、自宅に薪ストーブを入れたそうである。本格的な営業運転が開始されると、さらにこれに騒音の問題が加わってくる。
 同じように被害を被っている住人と集団で、JR東海に対して補償の交渉をやったが、「実験線から50m以内でないと補償の対象にしない」「日照時間を通常1日8時間として4時間は受忍せよ。残りの4時間について補償しよう」「家1軒を補償するのではなく、住人1人について1部屋」「保証は灯油代や乾燥機代など。年にして10万円程度で、30年を限度とする」という態度だったそうである。
 山梨は地上部分が多いので、建設が進めば進むほどこういった話は沢山出てくるだろう。

6千V送電線が15万Vに
 笛吹市境川町のコンビニ駐車場に車を停め、目の前に立ち並ぶ送電線の鉄塔を見る。鉄塔の地権者の方のお話では、現在は6000Vなのだが、それを15万Vに変更し、鉄塔の高さも30mから60mにして、リニアに電力を供給すると言われている。さらに鉄塔の高さが高くなることによって、送電線直下の土地への補償額も安くなってしまうとのこと。より高圧な送電線になることによる漏洩磁場の強さも気になるところである。

笛吹市境川町の送電線鉄塔

果樹園がダメになる
 甲府市上曽根町の、地上部分ほぼ直下となる方を訪れた。地上部分には騒音対策のため、20㎝の厚みで8mの高さのフードをかぶせるのだが、実験線を見ても所々フードのない区間がある。そして、この近辺はフードがない最長の区間とされている。山梨県は、知事の意見書として、JR東海に、リニアが見られる場所もつくって欲しいと要望をしている。つまり、リニアが見られる観光スポットを作りたいという意向があるようなのだ。この方は、自宅が地上部分南側となるが、北側に果樹畑があり、日陰のため駄目になるだろうとのことであった。

実験線のフードのない区間

地上部の影になる予定の果樹園

土地が三角形に
 最後に、南アルプス市の戸田、清水地区を訪ねた。リニア地上区間は、甲府盆地の方から南アルプス方面に南西に斜めに横切り、この地区西側にある中部横断自動車道を40mの高さで越えていくという。斜めのため、自分の土地や家屋が寸断されて土地が三角形になってしまう住民が多数出てくることがこの地域における大きな問題である。JR東海は、軌道で22m、その両側に4m緩衝地帯を作るとしているが、住民側は「緩衝地帯を100m作りなさい。そうすれば話し合いに応じる」と抵抗を続けている。
 清水という名の通り、この辺りは良質の湧水が多く、話を聞かせていただいた住民の自宅にも湧水から作られた池があった。これも建設が始まれば涸れてしまうだろうとのこと。

県あげての歓迎ムードの中で
 県内の住民側の動きとしては、各地の住民団体がまとまって「山梨リニア沿線住民の会」を発足させ、私が訪れた翌1月29日に学習会を開催し、130人が参加したという。また、中央市にできる車両保守基地への引き込み線予定地の桑畑で立木トラスト運動が展開され、最終的には661名が参加することとなった。

中央市の立木トラスト地の桑畑

 山梨県内各地を見て回るのは今回が初めてだったが、やはり地上区間が多いことによる日照、騒音、磁場など環境への影響が顕著だったのが印象的である。県あげて「リニア歓迎」「リニアで町おこし」のムードある中、反対の声を上げ続けるのは大変だと思う。私も立木トラスト運動に参加しているが、これからも現地の状況を伝えて問題を提起し、行動していきたい。【渡邊幸之助】

カテゴリー: 超低周波, 送電線, リニア 

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