5G基地局電波「危険である可能性」 米研究者が試算

 5Gの基地局が展開されると、現在のLTEと比べて、携帯電話ユーザーが基地局から曝露する電波が著しく強くなるという試算結果を示す論文Human Exposure to RF Fields in 5G Downlinkを、米国ジョージアサザン大学電気工学部のImtiaz Nasim(ナシム)らが2017年11月に IEEE International Conference on Communications (ICC)に提出しました(IEEEは、米国電気通信学会の略称)。
 論文は、3GPP(通信方式の仕様を標準化する国際プロジェクト)が公表した仕様に基づいて試算。既に利用されている「リリース9」(2010年に公表されたLTE(4G)のバージョン」)と5Gについて、周波数はそれぞれ1.9GHzと28GHz、基地局間の距離は1000mと200m、帯域幅は20MHzと850MHzなどと設定。基地局ごとのアンテナ数はLTEの16個(4×4)に対して、5Gは64個(8×8)と256個(16×16)の2パターンを計算しました。
 その結果の一つがこのグラフです。

携帯端末の位置における基地局電波の電力密度の比較(LTEと5G)

 LTEは基地局間の距離が1000mあり、基地局のすぐ近くでは電力密度が高いですが、基地局と基地局の間の場所では比較的低くなっているので、グラフは全体的に「U」の字のようになっています。これに対して5Gは、基地局間の距離が200mと短く、グラフは「V」の字のようになっており、しかも、電力密度が一番低い場所でも、LTEに比べてはるかに高い値になっています。グラフからは、ほとんどの場所において、電波防護指針の1000μW/c㎡(10W/㎡)を上回っているように読み取ることができ、にわかに信じがたいほどの強さになっています。
 論文の筆者は(1)従来より小さなセル(基地局のカバー範囲)の展開による、より多数の基地局、および(2)より大きなフェーズドアレイの仕様によるビームごとのより集中したRF(高周波電磁波)エネルギーの増加-に起因して、基地局からの電波が「危険である可能性」があると指摘、「(基地局からの電波が)電力密度とSARの危険なレベルをもたらすアングルでユーザーへ向けられた場合に、基地局の電波発生を強制的に回避するよう」に設計することを促しています。
 フェーズドアレイアンテナとは、任意の方向へ電波をビーム状に飛ばせるアンテナで、レーダーでも利用されている仕組みです
 5Gシステムはまだ設計途上にあるため、2020年(予定)に開始される実際のサービスがこの論文で試算した通りになるのか不明ですが、私たちは厳重な警戒が必要だと言えそうです。【網代太郎】

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