コードレスフォンを電波を発信しないよう改造

 コードレスフォン(無線電話)は、家庭内で使う物の中でも特に強い電波(高周波電磁波)を出します。このため、電磁波過敏症(EHS)の方々は使えない場合が多いです。また、EHSでない方であっても、電磁波による健康影響を予防するため、使わないことをお勧めします。コードレスフォンの場合は、たとえ子機を1台も使用していなくても、親機から強い電波が出ます。

コードレスでない電話機は少ない
 電話機能だけのシンプルなタイプであれば、コードレスでない電話機も販売されています。しかし留守番電話機能付きがほしい場合、選択肢はかなり限られます。筆者が、家電の価格を比較するウェブサイト「価格.com」で留守番電話について「受話器タイプ=有線式」で検索したところ、わずか4機種しか販売されていませんでした。
 さらに問題なのはファクスです。家庭用ファクス付き電話機でコードレスでないものは、現在ほとんど販売されていないようです。同様に価格.comで検索したところ3機種が表示されましたが、いずれも10年以上前に発売されたもので、すでに店頭から消えているようでした。コードレスフォンでないファクスを買おうとしたら、コピーやスキャナの機能もついたいわゆる「複合機」しか選択肢がないようです。価格は1万円台という安い機種もありますが、一般的な家庭用ファクスよりは大きいので置き場所に困ることもありそうです。

電気店で「発信機」を外してもらう
 このような文字通り「頭の痛い」電話機問題を、思いがけない方法でクリアした方がいらっしゃいます。この会報でたびたびご登場の奈良県御杖村のEHS発症者の小林さんです。
 小林さんは重症のEHSのために受話器を耳にあてて通話ができないので、今年5月、留守番電話機を購入することにしました。小林さんは化学物質過敏症でもあるので新品家電のにおいなどにも反応するため、中古店で一番古そうなものを夫に買ってもらいました。パイオニア製で、子機が無いものでした。
 しかし、その留守番電話機に着信すると、小林さんに頭痛、動悸、歩行不能の症状が出ました。電波を測定したら1万V/m以上あってビックリ。ネットで調べてもらったところ、コードレスフォンの親機だったことが分かりました。親機の受話器はコードで本体につながっているので、一見してコードレスフォンだとは分からなかったとのことです。
 翌日、知人に紹介してもらった隣村で電気店を営む今井和美さんのところへ夫がこの留守番電話機を持参して相談すると、今井さんは「発信機を外せば良い」と言い、発信部分の部品を外したうえで基盤の回線をハンダ付けしてくれました。それを持ち帰って測定したら電波がゼロになったとのことです。この電気店の方はどんなに古い家電でも直してくれるという評判の方だと小林さんは聞いていましたが、その後、NHK総合テレビの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で今井さんが取り上げられ(7月30日放送「家電の命、最後まで~電器店主・今井和美~」)、小林さんによると放送の影響で修理申し込みが押し寄せて1年半先まで予約待ちとのことです。
 近所に腕の良い電気屋さんがいれば、同様の対応をしていただけるかもしれません。【網代太郎】

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