ニックさん ES障害者の立場から給電するよう経産省と話し合う

電気をストップする行為は非人道的
 スマートメーターに反対している山梨県在住のニック・フォレストさん(仮名)宅に対し東京電力パワーグリッド(東電)は電気供給を止めるという野蛮な行為を10か月にわたって続けています。電気供給は日常生活を営む上で必要不可欠です。ニックさんはES(電磁波過敏症)のためスマートメーター導入に反対しアナログメーターの設置を要求してきました。ところが東電山梨総支社はニックさんに対し一切の通知をせず、一切の許可もとらず、電気供給をストップしています。そこでニックさんはES障害者の立場から東電がアナログメーターで通電するよう経産省に掛け合いました。

障害者差別解消法を使っての話し合い
 8月27日(火)午後、「DPI(Disabled Peoples International=障害者インターナショナル)日本会議」の五位淵(ごいぶち)真美さんと西田えみ子さんと介助の人(五位淵さんは車椅子)及びニックさんと私(大久保)の5人で経産省に行きました。電気供給をストップされたニックさんがDPI日本会議にお願いして事態を打開するためにとられた行動です。

経産省係長は迅速に対応したが
 対応したのは秀川佳苗係長(経済産業政策局産業人材政策室)。若い女性キャリアです。いきなりの訪問なので私がスマートメーターの問題点とニックさんの現在置かれている状況を説明しました。電磁波研とニックさんは8月5日に経産省担当者と会いました(この会報の前の記事参照)が、それから3週間経つのに経産省から回答がない、電気供給をストップする行為はES障害者差別である、早急にアナログメーターを前提に通電すべきである、と主張しました。秀川係長は短時間の説明にもかかわらず要点良く理解し、今週中にも担当から回答させると確約してくれました。
 8月30日(金)に早速秀川係長から回答がありました。それによると8月5日の面談後経産省は東電に対し「ニックと対話し解決策を提案するよう」求めたそうです。そして8月22日に東電はニックに解決策をすでに送ったとのことです。

とんでもない東電の「解決策」
 驚いてニックに「8月22日に東電から解決策が来ているそうだが」と聞くと、来ていることは来ているがとても「解決策」といえるシロモノでなかったので重要な回答とは思わなかったというのです。
 東電の「解決策」の中身は、①これまでは山梨総支社が担当していたが、今後は本社スマートメーター推進室の「ヨシダ・ツヨシ」(マネージャー=課長)が応対する、②ニックへの提案として2案ある、一つはスマートメーターから通信部を外した上で金属のケースにスマートメーターを入れる、もう一つは家から10m離れた場所に小さなポールを立てそこにスマートメーターを設置する、③提案2つに係る費用はニックが支払うので選んでくれたら見積書を出す、以上です。
 ニックも私も、これでは解決策にならないと秀川係長に伝えました。ニックの要求は「アナログメーターに交換し、その上で通電する」という至ってシンプルなものです。

東電の横暴許す経産省
 秀川係長から「東電の案ではニックさんが受け入れられないことは理解した。東電に対し早期解決に向け、ニックさんと密なコミュニケ―ションと解決策の提案を行うよう引き続き求めていく」と回答がありました。
 次に、秀川係長でなく、スマートメーターの直接の担当である岩男健佑室長補佐(資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課電力産業・市場室)が引き継ぎました。8月5日に会った担当者です。回答内容は「我々は東電の決定を支援することはない。今回の東電の回答はあくまで東電による判断・決定である」というものです。
 この煮え切らない回答にニックさんは「経産省はスマートメーターを強制する法律はないと認めている。それなのに東電はESの私に電気供給を盾にスマートメーター設置を迫っている。これは障害者差別を禁じた障害者差別解消法に抵触する行為ではないか」と経産省の逃げ腰を批判しました。

逃げと言い訳では済まされない
 これに対し岩男室長補佐は「スマートメーター設置を義務づける法律はないことと同様、我々は東電に具体的な解決策を提案するよう強制することができない立場にあります。電力会社に対し(強制力はない)指導として、問題解決に向けた積極的な取組等を求めることはできると考えている」と回答しました。さらに「他方、電力会社は法律に基づき電気の需要家の元に電気を届ける義務があるため、そのためのお話や問題解決は必要不可欠であると考えます。」とも回答しています。
 いまだ途中経過ですが、今後も経産省と東電PGを追及していきます。【大久保貞利】

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