古庄弘枝さん(会員)
世界同時「5G導入停止」要求アクション
2020年1月24日、「5G停止の要請文提出と参議院議員会館院内集会」が行われました。主催者は、加藤やすこさん(いのち環境ネットワーク)、Tony Boysさん(翻訳家)、Pat Ormsbyさん(翻訳家)。
「5G停止の要請文」は、アメリカの研究者アーサー・ファーステンバーグさんが発表した「国際アピール:地上と宇宙での5G廃止に向けて」(www.5gSpaceAppeal.org)。
この文書は30カ国語に翻訳されて、世界中の科学者・技術者・医師・医療関係者・獣医・養蜂家・研究者・市民団体・市民などから19万100筆(2020年1月23日まで)の署名を集めました。主催者の3人は、同アピール文の日本語訳を担当した人たちです。
この国際アピールの提出と「5G導入停止」を求めるアクションが、ファーステンバーグさんの呼びかけで、1月25日に世界20カ国以上で計画されました。
提出先は、国連(UN)、世界保健機関(WHO)、欧州連合(EU)、欧州評議会(EC)と各国政府。その一環として、日本で、アピール文の提出と院内集会を企画したのが上記3人でした。『アース通信(64号)』(いのち環境ネットワークの会報)によると、1月25日には、35カ国で、5G導入に反対するデモや5Gのリスクを伝える専門家の会議などが260以上行われたということです。
19万100筆の署名提出と6つの要求項目
参議院議員会館には、電磁波過敏症(EHS)の人や市民など約30人が集まりました。主催者が政府側に19万100筆の署名を渡すのを見守ったのち、その場で院内集会(意見交換会)が行われました。政府側からは、総務省、厚生労働省、環境省、内閣府の職員が参加。
国際アピールは、「204カ国の署名者は、5Gの展開をやめるよう、直ちに要請します。5Gの無線電磁波は、人体や環境に有害であることが証明されています。5Gの展開は、国際法違反と定義されるような、人体や環境を実験台とする要素をもっています」とし、次の6点(概略)の要求項目を挙げています。
(a)5Gの地上と宇宙での配備を中止するための措置を直ちに実行すること。
(b)無線電磁波による健康被害について周知し、なぜ、どのように避けるべきかを周知すること。
(c)無線通信機器より有線通信を優先させ、それを実現すること。
(d)無線・通信会社が、ロビー団体などを通じて、5Gを含む無線電磁波のさらなる拡大を許可するように役人などを説得することを、禁止すること。
(e)独立した専門家の国際グループを設立し、蓄積された被曝歴を考慮した無線電磁波の新しい国際基準を設立し、全ての環境と健康を守ること。
(f)独立した専門家の国際グループを設立し、宇宙の利用方法が人間や環境にとって安全なものであることを約束した包括的な規制の枠組みを構築すること。
「5G導入停止」に対する政府の回答
6点の要求項目に対する回答を、総務省(総合通信基盤局・電波部・電波環境課)の渡邊修宏さん(課長補佐)が読み上げました。政府側の回答は、簡略化すると以下のようなものでした。
(a)「熱作用」が起きないように電波防護指針を定めている。基準値以下の電波では、人体への悪影響は認められていない。
(b)日常生活で悪影響が生じることはないと説明・周知している。
(c)無線通信は国民の生命を守るインフラとしても重要。
(d)透明性や公平性を確保しながら取り組んでいる。
(e)国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が国際ガイドラインの策定・見直しを行っている。総務省でも熱作用以外の影響について研究したが、そのような可能性を示す結果はなかった。
(f)宇宙空間が安全・安心に利用できる環境を確保することは重要。引き続き、宇宙の持続的な開発利用を推進する。
「推進も規制も」担っている総務省ですが、完全に推進よりの回答でした。
EHSの人たちの悲痛な訴え
政府が回答を読み上げた後、質疑応答、意見交換が行われました。加藤さんからは、政府側に対して、次のような問いかけがなされました。
「EHSで苦しんでいる人たちを実態調査する意思はあるのか」「最新の研究をアップデートしていくべきではないか」「子どもを保護する方策を考えているのか」「5G衛星による気象衛星への電波干渉の問題が出ているが、どう考えているのか」「生態系への影響も指摘されている。環境省として独自に研究したり安全性を検証したりするのか」など。
これに対する政府側の答弁はいずれも「EHSの調査はしない」(総務省)、「現時点で、EHSを示す研究結果は出ていない」(総務省)、「気象衛星への電波干渉の問題など、認識が不十分だった」(内閣府)、「一般環境中の電磁波の影響については知見を収集していない」(環境省)など。(詳しくは『アース通信(64号)』参照)
参加していたEHSの人たちが政府に訴えたのは、次のようなことでした。
「私はEHSで電磁波に暴露すると目にすごく痛みを感じ、唾液が乾く。そこら中に基地局が建って常に電波を浴びることの危険性を、どのように考えるのか」
「ここに来るまで『今日も呼吸困難になったらどうしよう』と思いながら来た。5Gになったら逃げ場はない」
「5Gを展開するなら、EHS患者用に隔離する場所を国で作れ。安全を確保してほしい」
「EHSと化学物質過敏症(MCS)で、難病をいくつも抱えているが、病院には入れない。新幹線もWiFiがあるために乗れない。どうやって病院にたどり着き、診察を受けたらいいのか教えて」
「どうすれば病気の原因が電磁波だと認識してもらえるのか、診断書を見せればいいのか。症状をその場で見せればいいのか」
「EHSを国で研究してほしい」などなど。
EHSの人たちの悲痛な訴えは、時間ギリギリまで続きました。