学校のWi-Fi制限する/制限を求める海外の動き

 米国Devra Davis(デイビス)博士らによる、環境中の健康危険要因の研究を行う非営利団体「Environmental Health Trust(EHT)」のウェブサイトには、電磁波問題についての情報が豊富に掲載されています。このうち、「Wi-Fiを撤去し曝露を減らしている世界の学校」のページをご紹介します。このページでは掲載情報の出典へリンクが張られているので、より詳しい情報に関心がある方は、ご覧になってみてください。[ ]は訳注。【訳・網代太郎】


ピエールジョルジオ・バルボーニ教育委員がサンタゴスティーノ(イタリア)のWi-Fiを切断(EHTのウェブサイトより)

より安全な学校環境を目指した世界の動き

 世界中の学校や政府は、学校内の無線および電磁波のレベルを下げるために行動を起こしている。学校での無線曝露は、携帯電話、Wi-Fi、5Gバーチャルリアリティ、近くの携帯基地局/アンテナから発生する。さらに、現在、学校には無線セキュリティやネットワーク機器があり、それが無線の曝露を生み出している。学校はまた、近くの高圧送電線からの磁場曝露がある。
 Wi-Fiを安全な有線ネットワークに置き換えるような政府の全国的な行動の他に、個々の学区や個々の学校がチェンジを勝ち取っている。このページでは、世界各地で進められている政策のほんの一部を紹介する。EHTは、学校での安全なテクノロジーに力を入れており、この問題について定期的に執筆し、政策立案者に報告している。(このページは、すべての情報源にハイパーリンクされている)

フランス
 フランスでは、幼稚園でのWi-Fiを禁止したり、学校はデフォルト設定として無線をオフにすることでWi-Fiを制限したり、教師がインターネットにアクセスするためのパソコンを有線(無線ではない)にしたりしている。学校内のネットワークは有線化されており、無線が必要な場面では、教室内で必要に応じて短時間だけオンにし、使用後はオフにしている。フランスでも、小・中学校での携帯電話の使用を禁止し、数年前から公衆衛生の取り組みで、被曝を減らすための教育を開始している。

キプロス
 キプロスは小学校の教室からWi-Fiを撤去し、保護者、ティーンエイジャー、妊婦を教育する強力な啓蒙キャンペーンを展開している。

ベルギー
 ベルギーは幼児向けに製造された携帯電話を禁止し、ヘント[ベルギーで2番目に人口が多い都市]の幼稚園でもWi-Fiを禁止している。

イスラエル
 イスラエルは保育園でのWi-Fiを禁止し、小学校でのWi-Fiを制限し、教室での携帯電話の使用を禁止し、携帯電話の放射線量を減らす方法を教育する国家機関を設置している。低周波磁場は4mGに制限している。

フランス領ポリネシア
 また、フランス領ポリネシアでは、保育園からWi-Fiを撤去し、無線をデフォルト設定としてオフにしたほか、国としての大規模な公衆衛生キャンペーンに着手している。

世界の都市
 イタリアのボルゴフランコ・ディヴレーア[トリノ県にある町]やトリノ、イスラエルのハイファ[地中海沿岸の都市]など、ヨーロッパのいくつかの都市では、市長らが学校でWi-Fiネットワークに代わる有線ネットワークの導入を呼びかけている。
 左の動画は、ハイファの学校の技術主任が教室をどのように有線化したかを紹介している。

欧州評議会[1]
 2011年、欧州評議会の議員会議(PACE)は決議1815「電磁場の潜在的な危険性とその環境への影響」を可決させ、欧州政府に電磁場への曝露、「特に、脳腫瘍のリスクが最も高いと思われる子どもや若者への曝露を減らすため、特に学校や教室で有線インターネット接続を優先し、学校の敷地内の児童による携帯電話の使用を厳しく規制する」ための「すべての合理的な措置を講じる」よう求めた。

各都市がPACE決議1815の実施を求めている
 スペインでは、PACE決議1815の勧告の実施を要請している自治体には、バラカルド、エレンテリア、エスパルティナス、ルスピタレート・ダ・リュブラガート、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ、サン・セバスティアン、ビトリア、プレンツィア、クルナリャー・ダ・リュブラガート、トロクス、ムラ、ブエナビスタ・デル・ノルテ、ポイオ、アルガンダ・デル・レイ、セニサテ、ホスピタレット、ギプスコア議会、ビリャバ、ビトリア=ガステイス、およびバスク議会とナバラ議会がある。
 イタリアで、PACE決議1815の勧告の実施を要請した自治体には、学校での電磁界曝露を制限するピエモンテ州議会の決議、南チロル州議会の無線LAN、携帯無線、放射線曝露に関する決議、ボローニャ市議会の広報キャンペーンの開始に関する決議などがある。また、イタリアでは500以上の自治体が、安全性を確保するための安全性調査が行われるまで5Gを停止する決議を可決している。

アメリカ
 米国では、法律によって学校でのワイヤレス曝露に対する調査を開始している[州]政府や、より安全な技術に向けて対策を講じている学区がある。
・2019年、オレゴン州はSB283という法案を可決し、オレゴン州保健局に、マイクロ波放射への曝露、特に学校での無線ネットワーク技術の使用に起因する曝露の健康影響について、独立した資金提供による専門家が査読した科学的研究をレビューし、2021年に立法教育議会に報告するよう指示した。
・2017年、メリーランド州の子供の環境衛生と保護諮問委員会は、無線ではなく有線のインターネット接続を提供することで、学校での無線被曝を減らすための初の州の勧告を発表した。
・カリフォルニア州PTAは、電磁界に関する決議を可決し、電磁界のリスク低減政策についての意思決定者や学校コミュニティを教育し、情報を提供することを決議した。
・[ニューヨーク州]オンテオラ学区とマサチューセッツ州アッシュランド学区では、使用していないときはWi-Fiをオフにし、デバイスを体に近づけないようにする「ベストプラクティス」をすべての教室で実施している。
・いくつかの学区(カリフォルニア州ペタルーマ、メリーランド州モンゴメリー郡)では、学校内でのWi-Fiの健康問題を訴える保護者の声を受けて、タブレットやノートパソコンは机の上に置く(ひざの上ではなく)という方針をとっている。
・ロサンゼルス学区は、学校の携帯基地局を禁止し、生物学的影響の存在を認めてFCCの制限値の10,000倍低い無線曝露の制限を設定している。
・マサチューセッツ州乳がん協会は、小学生から高校生までを対象とした教育カリキュラムを発表した。

学校での5G
 5Gテクノロジーは健康に深刻な影響を与えると科学者が警告しているにもかかわらず、多くの学校が5G機器の試験台になりつつある。
 ニューハンプシャー州は、5Gの健康と環境への影響を研究する専門家委員会を設置したHB522「進化する5G技術の環境と健康への影響を研究するための委員会を設置する法律」を可決した。委員会は毎月会合を開き、国際的な専門家にインタビューを行う。会議ノートと議題はすべてオンラインで見られる。

教員組合
 決議を出し、ブリーフィング資料を作成し、教師と職員の両方のための教育と保護を促している教師組合がある。
 ニューヨーク州教員組合は、安全な技術に関する決議を発表し、オンラインセミナー「ワイヤレス技術の危険性と学校での児童と職員の保護」を主催し、その「学校における最善の措置」に関するプレスリリースを発表した。
 サンフランシスコ教員連合は、携帯電話の使用を減らすための情報を教室に掲示することを呼びかける「安全な技術に関する決議」を可決し、情報提供のためのオンラインセミナーを開催した。
 2016年、オンタリオ州の初等教育者連盟は「Wi-Fiモラトリアム」を呼びかけた。
 2013年、カナダ教員連盟は報告書「学校でのWi-Fi使用」を発行し、Wi-Fiアクセスポイントやデバイスの潜在的な曝露リスクを回避する方法について国民を教育するための教育プログラムを推奨している。

Wi-Fiを撤去した学校
 私立学校もまた、無線の発生源を撤去し、保護者、生徒、教師を教育するための措置を講じている。
 Upper Sturt Primary School[オーストラリアの小学校]は「Wi-Fiと携帯電話の方針」を掲げており、私立学校が実際に実施できる方針の例を示している。
 キャッスルヒル高校[オーストラリア]では、各教室で教師が使用を決定した場合を除き、ワイヤレスWAPアンテナがオフになるように専用のプラグを設置している。同校では、生徒に携帯電話と無線放射線についての情報を提供し、教育する方針を持っており、被曝を減らすことを公式に推奨している。生徒にはデバイスの無線をオフにするように指導している。
 Wi-Fiを廃止した学校には、L’Isola dei Tesori[イタリア]、Caledon East Children’s Centre[カナダ]、City of Lakes Waldorf School[米]などがある。
(以下略)

[1]原文の小見出しは「EUROPEAN PARLIMENT(欧州議会)」だが、原文の内容は欧州評議会(Council of Europe)について述べている。欧州議会と欧州評議会は協力関係にあるものの別組織である。原文が誤っている可能性があるので、この訳文の小見出しは「欧州評議会」とした。欧州評議会は1949年、人権、民主主義、法の支配の分野で国際社会の基準策定を主導する汎欧州の国際機関として設立。EUよりも多い47か国が参加し、日本などもオブザーバーとして参加している(参照)。

 

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