Wi-Fi・香害のない築120年の古民家 「喫茶・ギャラリーおいわけ」 あきる野市をES・CSの人々が安心して住み続けられる街に

喫茶・ギャラリーおいわけの入口

古庄弘枝さん(ノンフィクションライター、電磁波研会員)

「香害自粛のお願い」
「当店はWi-Fiありません」
 2021年12月21日、東京都あきる野市にある「喫茶・ギャラリー おいわけ」(以下「おいわけ」)に行ってきました。「おいわけ」はJR武蔵五日市駅からバスで約12分、バス停「追分」下車すぐにある築120年の古民家です。
 入口右手には「香害自粛のお願い」のポスターが張られ、入り口左横の掲示板には「当店はWi-Fiありません」の張り紙が。そこには、「電磁波に敏感な方が増えています。店内ではなるべく機内モードにしていただき、スマホの使用をおひかえ下さい」と書かれている。一般客を相手にしているため、「スマホoff」「香害を身に着けた人の入室お断り」の強制まではできないが、「自粛のお願い」を続けることで、いずれは「スマホoff」「香害NO」の空間として定着していけたらと、経営者で電磁波過敏症(ES)の浦野悦子さんは言います。
 浦野さんがESを発症したのは2014年。自宅をオール電化住宅にしたのが大きな原因でした。そのときから、それまで日常的に使っていたパソコン、電子レンジ、IH調理器、携帯電話などを使うと、めまい・吐き気・頭痛、下痢に悩まされるように。スマホ利用者の多い電車や、電磁放射線の強い都市部への外出もままならなくなりました。
 その後、電磁放射線の健康被害について学び、調理器をガスに戻したりするなかで、体調も落ち着くように。「自分が安心していられる居場所がほしい」と探した結果、古民家を2018年11月に購入。改装して開店したのが「おいわけ」です。

月1回「おしゃべり会」開催
 「おいわけ」では、毎月第3火曜日(午後1時~4時)に、「電磁波問題を考えるあきる野の会」(以下、あきる野の会)主催で「おしゃべり会」が開かれています。
 おしゃべり会に参加できるのは、香害や電磁放射線による体調不良で悩んでいる人、香害・電磁放射線の有害性に関心のある人。参加者は「スマホoff」「香害厳禁」が条件です。
 同会の代表は岡田丈広さん。彼は2005年から不眠・動悸・うつ等に悩まされ、2010年に化学物質過敏症(CS)と診断され、ESも併発している当事者です。
 おしゃべり会の1回目は2018年1月22日。共にあきる野市の住民である浦野さんと岡田さんが2017年5月に知人の紹介で出会い、「地元でもっと多くの人と情報交換できたらいいね!」ということから企画されました。
 二人はおしゃべり会を主催する会の名前を「あきる野市化学物質電磁波問題を考える会」(後、あきる野の会に変更)とし、おしゃべり会を市内の草花クラブハウスなどで開催してきました。浦野さんが「おいわけ」を開店してからは、「おいわけ」を会場に参加者とともに化学物質・電磁放射線問題について語り合ってきました。

市議会議長あてに陳情を提出
 あきる野の会では、メンバーそれぞれが市長に対して、電磁放射線環境や化学物質問題の改善に向けて取り組むように手紙を書いてきました。
 2021年6月8日には、会としてあきる野市議会議長あてに「子どもが過ごす場所(幼稚園・保育園・公園など)の電磁波(非電離放射線)規制に関する条例制定を求める陳情」を提出しました。
 条例の制定に関しては、以下3点の内容を盛り込むように求めています。

  1. 当該の施設内においてWi-Fi(無線LAN)の禁止。
  2. 当該の施設内において携帯電話、スマホ、タブレットなど無線通信機器の使用を指定場所以外で禁止。(子どもの近くで使用しない。受動喫煙防止の対策と同様)
  3. 当該の施設周辺において携帯電話基地局を設置する際は、事前に事業計画を広く周知し、地域住民に説明会を開き、住民の意見を反映する。(特に健康への影響が危惧されている5G基地局の設置は禁止)

 陳情は採択されませんでした。しかし、提出者の岡田さんが意見陳述したことで、それまで「ES患者の存在」を知らなかった多くの議員や職員が、その存在を知ったのです。陳情の効果は大きかったというべきでしょう。
 あきる野の会では引き続き、会としても個人としてもES・CS当事者が安心して暮らせるあきる野市をめざして市に働きかけていく予定です。ES・CSの人々が安心して住み続けられる街こそが、誰にとっても安心・安全な街だからです。
 「おいわけ」は、その拠点としてますます重要性を増しそうです。

ミニコンサート、勉強会、土蔵での絵画・写真展なども
 「おいわけ」は築120年の古民家のため、土間の他、何個もの和室も土蔵もあります。敷地内にはニワトリもウサギも暮らしています。
 和室では茶話会、ミニコンサート、勉強会、講演会などが行われ、土蔵では絵画展や写真展などが行われてきました。マルシェの開催や、定期的なイベントも行われ、月に1度のヨガ教室なども行われています。たてもの全体を借り切ることも可能です。
 電磁放射線の危険性や健康被害について書かれた本・冊子、香害に関する資料なども充実しています。もともと自然保護や環境問題に関心をもってきた浦野さんですが、ESになったことで、改めて自分のやりたいこと、方向性について考えたと言います。「おいわけ」は、そんな彼女のやりたいことを実現させる舞台になっているようです。

 「おいわけ」の住所は、東京都あきる野市乙津628
 留守電・faxは、042-595-1847
 090―7943―1088(ショートメールで)
 営業日は、水・木・土・日。
 営業時間は、12時~17時。
 行き方は、JR五日市線「武蔵五日市駅」前より、バス①番乗り場より、数馬・藤倉・上養沢行き「追分」下車。
 「おしゃべり会」の申し込みは岡田丈広さん(042-596-5699)まで。

 

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする