新刊案内 「英語教育神話」の解体 ~今なぜこの教科書か

eigokaitai共著中村敬・峯村勝・高柴浩 発行・三元社(3700円+税)

 古くからの当会会員で、現在は長野県北安曇野郡白馬に在住の中村敬さんから表題の共著を寄贈していただきました。

電磁波公害を取り上げている
 この本は今日の学校英語教育への厳しい批判と、たんに批判だけでなく「あるべき英語教科書」を同時に提起しています。「あるべき英語教科書」は3巻で構成されていますが、第3巻では「電磁波公害」を取り上げ、電磁波過敏症で苦しむイギリス女性と電磁波公害に苦しむ日本女性の例が挙げられています。

国策教科書は真の学校英語教育の崩壊を招きかねない
 日本の学校英語教育は、2011年度から小学校で「外国語教育」が始まり、2012年度から中学校で、2013年度から高校で、改訂学習指導要領に基づく英語教育が始まりました。この改訂指導要領に基づく国策英語教育は「学校における英語教育の崩壊をまねきかねない危険な内容をはらんでいる」と3共著者は警告しています。その特徴は、「グローバリズムの名」で、英語を道具として「使える」能力の育成に特化しているところにあります。このことは、学校教育の要諦である「考えさせる」ことと無縁で、こうした改訂は学校や教室の中の問題にとどまらず、国民思想の形成にかかわる社会問題として3氏はとらえています。

英語教育は政策推進ではなく、子どものためであるべき
 国の政策は「TOEFL(トーフル)」というアメリカ製の英語教育に代表されるような「まず英語で会話できる能力」を重視する方向です。しかし、学校における英語教育はあくまで子どものためを主軸に「教師に教育・指導の自由を保障すること」が大事であると3氏は主張します。
 中村さんは1945年の敗戦の年に中学1年生で、連合軍の占領下で素朴にアングロサクソン文化の崇拝者だったと語っています。しかし、英語の社会性・政治性の本質にふれるにつれ、さまざまな批判の観点を持つようになりました。「中村の半生は西洋文化の崇拝者としての自己の克服史であった」と厳しく自省されています。一読をおすすめします。【大久保貞利】

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