病院内ケータイ緩和指針が発表 当会は反対意見提出

 病院など多くの医療機関では、決められた場所以外での携帯電話使用を制限しているところが多いです。携帯電話からの電波が医療機器の誤作動を引き起こす恐れがあることが、その主な理由です。業界団体や関係省庁などで構成する「電波環境協議会」は、この制限を緩和する「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針(案)」(以下「新指針案」といいます)などを6月30日に発表し、7月22日まで意見を募集しました。当会は新指針案に反対する意見を提出しました。

「ケータイ使っていいけど、機器があったら離せ」
 新指針案は、1997年に策定された「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」(以下「現行指針」といいます)と比べて、携帯電話使用制限を大幅に緩和しています(表)。

現行指針と新指針案の比較(主な内容)
  現行指針 新指針案
「手術室」
「集中治療室」等
携帯電話等を持ち込まないこと。やむを得ず持ち込む場合は電源を切ること 携帯電話端末の使用は原則として禁止。必ず電源を切る(または電波を発射しないモードとする)こと
「検査室」 携帯電話端末の電源を切ること。また、検査室、診察室、病室及び処置室等の周囲(隣接する上下階及び左右の部屋、廊下等)においても、携帯電話端末の電源を切ること
「診療室」 携帯電話端末の使用は控える等の配慮がなされることが望ましい。携帯電話端末の電源を切る必要はない。ただし、医用電気機器を使用している患者がいる場合は、医用電気機器から設定された離隔距離以上離すこと
「病室」 携帯電話端末を使用可能とすることができる。ただし、影響が懸念される機器が存在する場合や医用電気機器を使用している患者がいる場合は離隔距離以上離すこと
「その他の区域」
待合室など医療機関側が携帯電話端末の使用を特に認めた区域でのみ携帯電話を使用すること。ただし、医療機関側が使用を認めた区域においても、緊急時など付近で医用電気機器が使用されている場合には、携帯電話端末の電源を切ること
「待合室、ロビー、食堂、廊下、エレベーターホール等」
マナーには配慮しつつ、通話等を含めて使用可能とすることができる。ただし、医用電気機器を使用している患者がいる場合、医用電気機器から設定された離隔距離以上離すこと。また、使用が制限されるエリアに隣接している場合は、必要に応じて使用制限を設定すること。なお、歩きながらの使用(いわゆる歩きスマホ)は危険であるため、控えるよう注意喚起をすること
新指針現行指針をもとに作成

 携帯電話使用禁止は「手術室、集中治療室(ICU等)、検査室、治療室等」のみとされました。その他の場所については携帯電話は使用可能、または使用を控える場合でも電源オフは不要としました。ただし、影響が懸念される医用機器がある場合や、医用機器を使用している患者がいる場合は、携帯電話を離隔距離(1m)以上離すこと、としています。これでは、医用機器や患者の存在に気づかずに携帯電話を近づけてしまう危険性があります。
 緩和の理由として、第3世代以降と比べて電波が強い第2世代携帯電話のサービスが終了したことや、携帯電話の制限緩和を希望する患者の生活の質(QOL)の向上などを挙げています。電磁波過敏症については、言及されていません。
 新指針案も現行指針も法的な強制力などはありませんが、新指針案策定にあたって医療機関に対して行ったアンケート結果によると、回答者の90%以上が新指針案を「ぜひ参考にしたい」または「内容を見て参考にしたい」と回答しており、全国の医療機関に対して影響が大きいものと思われます。

院内無線LANなどを推奨
 新指針案とともに公表され意見が募集された「医療機関における携帯電話等の使用に関する報告書(案)」には、無線LANネットワークを院内に構築した福井大学医学部附属病院の例などが「医療ICT(情報通信技術)化]の先進事例として肯定的に紹介されています。同病院では、スマートフォンによるナースコール受信や院内連絡、医療情報システム(電子カルテ等)へのアクセスが可能になっているといいます。病院内で電波利用を促進することは大問題です。
 当会が提出した意見は以下の通りです。【網代太郎】

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