京丹後市にXバンドレーダーが搬入 当会が電磁波測定と現地調査を実施

ジオパークに認定された美しい海岸線

 京都府京丹後市の米軍経ケ岬通信所の工事が進み10月21日未明、Xバンドレーダーが搬入された。Xバンドレーダー自体はまだ稼働していないが、住民は米軍基地ができ、Xバンドレーダーが稼働することを非常に懸念している。そこでXバンドレーダーが本格稼働する前に、現時点でこの地はどれくらいの電磁波の影響があるかを調べるために京丹後市宇川に測定に出かけた。現地調査と当地での電磁波測定(10月26日実施)の模様をレポートをする。
 まず京丹後市について簡単に紹介する。京丹後市とは、2004年に6つの町が合併して誕生した比較的新しい市である。米軍基地工事が進む宇川地区は、日本海に面した旧丹後町の北にあり、京都からは山陰線、北近畿タンゴ鉄道、バスなどを乗り継いで行く。京都市街からは電車では乗り継ぎによるが、うまく乗り継ぐことができても4時間ほどかかる。

世界ジオパークにも認定された自然豊かな地に不釣り合いな基地
 京都駅で測定を依頼した北島さん(仮名)と落ち合い、そこからクルマで京丹後市の宇川を目指す。途中、天の橋立を遠くに眺めながら、約3時間で日本海側に出た。そこには入り組んだ海岸線が続く美しい光景が広がっていた。この海岸は2010年10月、世界ジオパークに認定された地である。また、米軍基地が建設されている地のすぐ近い袖志地区には日本棚田100選に選ばれた場所もある。宇川一帯は、日本の原風景が残る自然豊かな地なのである。
 宇川に到着後、米軍基地のすぐ横にある清涼山九品寺(通称、穴文殊)に行く。地元では“文殊さん”として親しまれているこのお寺は、本堂に向かって左の自衛隊の駐屯地、右の米軍基地に挟まれている。もちろん境内は自由に参詣ができる。しかし、境内を歩いているだけで、警官がやってきて、何をしているのか聞かれるそうだ。このときは幸いに警官はいなかったが、米軍基地側から「ちょっとこっちに来てください」とたどたどしい日本語で声をかけられる。見るとフェンスの向こうにはライフルを持った米軍兵がいて、我々と歩調を合わせて移動している。こちらは別に何か悪いことをしているわけでもないし、呼びかけに応答して向こうに行く必要もないので、無視し続ける。それでもしきりに「ちょっとこっちに来てください」と声をかけられ続けた。ライフルを持った米軍兵に追われるのは、あまり気分のいいものではない。
 一通り下見をした我々は宿泊地に向かった。今回宿泊したのは、先の北島さんらが「小屋」と呼ぶ、米軍基地建設地のすぐ前にある元船宿。夜になると工事も終了し、波の音を聞きながら静かな夜が過ごせる思っていた。
 しかし、午後10時過ぎても工事はやまず、そこから騒音が続き、結局一晩中工事の音がやむ事はなかった。筆者は1日だけの滞在なのでなんとか我慢できたが、これが毎日となるとどうだろうと想像しただけで、気が重くなった。ここに人が暮らしていることはおかまいなしのようにも思えた。
 この日は夜遅くに米軍基地建設を憂う宇川有志の会・事務局長の永井友昭さんがやって来て、これまでの経緯をお聞きし、明日の測定に関して打ち合わせをした。

穴文殊

雨の中の測定、つきまとう警察
 翌日、朝から測定をする。ただ、風と雨が強く予定していた海上からの測定は船が出せないとのことで断念する。
 まずは経ケ岬灯台近くの駐車場から測定を始める。ここからは岳山山頂にある自衛隊のレーダーが見える。その影響が数値に表れる。
 数値はかなり高い値を示した。ここには見える範囲に携帯電話基地局はない。明らかに自衛隊レーダーの影響だ。いきなり予想していたのとは違う結果が出た。
 その後、測定は東から西方面に進め、昨日下見をした文殊さんへとやってきた。するとすぐに二人の警官が寄ってくる。「何をしているのですか?」と聞かれた。任意の職務質問だとのことで、適当に返答する。しかし横にぴったり着いて来る。仕方ないので文珠さんへのお参りと、この地の環境調査と答える。それでも警察官二人は測定中ずっとついて来た。

基地と警察官

基地と警察官

 境内の横にはフェンスが張り巡らされ、また本堂の裏にはXバンドレーダーがあると思われる大きな格納庫が威圧するように建ち、この光景はどう見ても異様であった。
 また、昨日聞こえた大きな音は、工事の重機だけではなく、発電機の音であることも分かった。米軍は外から電源を引くのではなく、基地内で発電するのでその発電機は24時間、365日稼働することになるのだ。
 測定をすると、Xバンドレーダーが稼働する前の現時点でもすぐ近くに携帯電話基地局があり、そこからの高周波の影響を受けていたことが分かった。
 穴文殊を後にし、測定のため国道を移動すると、何度も赤色灯を灯らせた警察の車両とすれ違ったり、後を追走されたりする。交通量が非常に少ない道で警察車両走行はとても目立っていた。

基地

基地

午後から測定の報告会と電磁波の勉強会を開催
 いくつかの地点を測定したが、ポイントは大きく2つある。まず自衛隊のレーダーからの影響を受けている地区が多くあること、そして各地域にある携帯電話基地局からの影響を受けていることだ。測定をする前は風光明媚で自然が豊かなところなので、電磁波の影響は少ないはずだと予測していた。
 しかし、測定してみるとその予測は大きく外れた。電磁波が高い地域が多いのである。自衛隊のレーダーは40年以上前に設置された。その影響を長く受けて来たのだ。現在米軍基地が設置され、今度はXバンドレーダーの電磁波の影響が懸念されるのだ。Xバンドレーダーは指向性が高いというが、TPY-2レーダーの電磁波の影響に関する京都府参与会の意見にも、「一般的なレーダーのアンテナからは、すべての電波が仕様に示されている方向、範囲内に飛ぶというわけではない(サイドローブ)。場合によっては、レーダーの上下左右にも、ある程度の電波が出ている可能性はある」と影響がある可能性を示している。
 ここの住民はどれだけ犠牲になればいいのか。
 午後からは地域の一部の住民が参加して、午前中行った測定の報告と電磁波についての初歩的な学習会が行われた。参加したのは10人程度、その多くが高齢者であった。皆さん熱心にお聞きいただき、自分たちが住む故郷の今後を心配していた。会に参加したほとんどの方が電磁波についてよく知らないようであり、よく分からないが、なんとなく怖いという印象のようだった。はじめて電磁波の影響について知った人もいた。ただ、測定の結果、岳山にある自衛隊のレーダーからの影響があることを告げると、米軍基地が来る前から電磁波に曝されていたのかとショックを隠しきれないようだった。
 「我々が何も分からないから、何をやっても大丈夫だと考えているんじゃないか」
 住民の1人が静かに話した。あたりに重苦しい空気が流れた。
 確かにそうかもしれない。
 ここに住むのは、多くが高齢者である。だからこそ、丁寧に話をしないとならないのでは。住民の無知を逆手に取って物事を進めていくのか。あまりほめられたやり方ではない。

防衛省測定箇所

防衛省測定結果

防衛省測定結果

国を守るとは、国民の安心・安全をまず守るのが先ではないか
 この地区は住民が約1600人ほどであり、その多くが高齢者である。いわゆる限界集落である。小学校も廃校になっており、新たな流入もほとんどなく人口は今後確実に減少していていく。文化的な面もあるが、大きな声で反対を唱える人が少なく、自分たちのやりやすい地を選んだ防衛省の思惑が見え隠れする。
 米軍基地を設置し、Xバンドレーダーを配備することは、広義では日本を守ることかもしれない。しかし、足もとの宇川の住民は本当に守られているのか。
 基地の警備をしていた警察を見ながら、いったい国を守るとは何か、本当の住民の安全とは何かについて考えさせられた。
 同時に今後も、京丹後市の宇川に建設される米軍基地とXバンドレーダーの動向を注視していきたい。【鮎川哲也・写真も】

カテゴリー: レーダー 

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