総務省「電波の安全に関する調査事業」の利益相反問題で市民と意見交換

網代太郎(新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会 共同代表)

 総務省の「電波の安全に関する調査事業」に関わる研究者らの多くが、電波を利用する産業から研究資金をもらったことがあるなど、いわゆる「利益相反」問題について、総務省担当課長らと市民との意見交換が2010年12月21日、行われました。
 電磁波問題に取り組む全国の市民団体等が緩やかに連携する「電磁波から健康を守る全国連絡会」は、2010年4月の院内集会後に総務・環境・厚労各省と意見交換を行い(本会報No.64既報)、その後、有志によって2010年9月に総務・環境両省と意見交換を行いました(本会報No.66既報)。これら2回とも、市民と各省の議論は噛み合いませんでした。残念ながら、電磁波が安全か危険かについて現状で論議しても平行線をたどるだけです。
 こうした経緯を踏まえ、電磁波が安全であろうとなかろうと、電磁波に苦しんでいる人・困っている人・不安を感じている人たちが現実にいるわけなのですから、そういう方々のために出来るはずのこと(海外では行われているが日本では行われていないことなど)、また、本来あるべき姿からはずれていることに、テーマを絞って、各省と話し合いを継続していこうということが、連絡会有志の間で検討されました。
 そのテーマとして、とりあえず、
1)携帯基地局設置の手続きや、設置後の位置情報等についての情報開示について
2)総務省の検討会や研究体制のあり方について
 の二つの案が出されました。
 そして今回の意見交換は、これらのうち、上記2について行われました。
 話し合いに先立ち、市民から質問状を出しました。これに対し、総務省はこ回答を当日示しました。
 当日は、衆議院議員石毛鍈子議員秘書の小林幸治さんのお世話により、総務省から担当課長ら3名が参加。市民は、ジャーナリストの植田武智さん、ガウスネット代表の懸樋哲夫さん、市民科学研究室代表の上田昌文さん、新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会共同代表の網代が参加しました。
 質問1)は、この「電波の安全に関する調査事業」が、本会報前号既報の通り「事業仕分け」で「廃止を含めた全面的見直し」の判定が下されたことについての質問です。仕分け結果を受け総務省は、この事業の新年度予算要求額12億円を25%減らして9億円にしましたが、それに対して行政刷新会議は、この事業を再仕分けの対象にはしなかったものの、「WHOの優先課題に沿った研究を継続的に続けているが、「廃止を含めた全面的な見直し」との行政事業レビュー公開プロセスの評価結果にもかかわらず、選択と集中という観点から、諸外国の研究状況を十分把握した上で、課題の絞り込みが十分行われているとは言い難い」と指摘しました。
 総務省による書面の回答1は、この指摘を踏まえたもので「世界各国の研究状況の調査を行い、現在、その状況を踏まえ見直し内容について検討している状況です」と述べています。しかし、その見直しについて行政刷新会議から再々チェックがあるわけではなく、国会審議での指摘等がなければ、9億円のままで決まってしまいそうでした。
 質問2)の利益相反問題について、総務省による書面は「生体電磁環境の検討会については(略)利益相反の検討対象とは考えていませんが、第三者から懸念を抱かれないよう十分に留意していきたい」と回答しました。さらに担当者は、「検討会」は「生態環境の研究について国内外の現状を把握して研究の方向性等について総務省局長に助言をする」ことが目的で、「評価会」は「個々の研究テーマまたは研究結果について適切かどうかを評価する」ことが目的である旨を説明。利益相反が問題になるのは評価会であり、検討会は問題にならないと述べました。
 これに対して、植田さんは、内閣府の食品安全委員会を例に「添加物が安全かどうかを評価する際に、さまざまな研究を総合的に評価して判断するが、総務省の検討会もそれに近いのではないか」旨、指摘。総務省は「(食品安全委員会のような)審議会、審査会等はものごとを決定するところだが、(電波の安全について)政策決定するのは総務省であり、検討会は決定に資する判断材料を参考として述べることが目的で、諮問機関とも異なる。したがって(利益相反問題について)審議会等と一概には比較できない」旨、述べました。これに対して、網代は「助言と諮問という制度の違いがあるとしても、総務省は検討会での検討結果に従って動いているように私たちには見える。第三者から利益相反について懸念を抱かれないようにするには、結局、委員の利益相反について調査せざるを得ないのではないか」旨、指摘しました。これに対して総務省が「これまで利益相反について懸念を表明されたことがあるのか」と逆に質問してきたので、これまでいろいろな場で「表明」してきたつもりの私たちは「どうすれば懸念を表明できるのですか?」と苦笑せざるを得ませんでした。
 また、「評価会」の委員や審議内容について総務省は「中立な評価の障害になる恐れがあるので、終了後に公開する」と説明。また、総務省自身が評価会を設けたのは、今年度(2010年度)からであり、昨年度までは、研究を(財)テレコム先端技術研究支援センターに請負(要するに丸投げ)させており、請負契約の仕様書で評価会のメンバーや審議内容の報告を含めていなかったので、個々の研究の評価をだれがどのようにしたのか総務省には情報がなく、今後も情報を求めることはできないとのことでした。
 植田さんなどが「それならば、昨年度までの研究が評価会できちんと評価されているのか、判断できないということになりますよね」などと質問、総務省は「評価結果を見て(中立と)判断している」等と答えました(注)。
 ここまでで時間切れとなり、続きを行う場を設けることを求めて、この日は終了となりました。双方のギャップは大きいですが、今年度から丸投げをやめた理由について総務省は「(評価の妥当性等の)中身についての問題ではないが、税金の無駄づかいという指摘もあったので」旨も述べ、市民の声が一定は届いているようでした。話し合いを続けていくことにより、市民は行政側についてより正確な知識を得られ、市民の懸念等が行政側に少しずつでも伝わっていくのではないかという一応の手応えは感じられました。

(注)政府は紙智子参議院議員の質問趣意書(2009年12月11日付)に対して、テレコム先端技術研究支援センターにおける評価会委員は上野照剛・九州大学大学院特任教授ら5名であると答弁している。

総務省への質問と意見

1.質問事項

1)11月9日の行政刷新会議の「改善通告」を受けて、電波の安全性に関する調査事業の来年度事業予算の見直しはどのようになされたのか?
 参考)改善通告(7ページ)
2)調査研究事業を受注する研究者、および生体電磁環境の検討会の委員の利益相反をどのように把握し管理しているか?
 参考)厚生労働科学研究における利益相反の管理に関する指針
 参考)厚生労働省「薬事分科会審議参加規程
 参考)質問趣意書200810 質問事項八とその回答
3)調査研究事業公募に対する審査体制はどのようになっているか?
4)電波の安全性に関する調査事業の公正中立性について国民の理解を得るためにどのような改善が必要だと思うか?

2.意見

1)研究を受注する研究者の利益相反について事前に情報を入手し、契約決定後は公表すること
2)研究公募に対する審査体制を公開し、審査の議事録を公開すること
3)生体電磁環境に関する検討会の委員の利益相反を調査し公開すること。厚生労働省の「薬事分科会審議参加規程」に則して問題のある委員は辞退させ、新たな委員を選定すること。新たな委員の選定についてはパブコメで委員候補の推薦を求めること。
4)「薬事分科会審議参加規程」に抵触しない場合でも、利益相反のある委員とない委員とのバランスを配慮すること
5)検討会の議事は、他省庁で行われているように速記かテープ録音後に詳細な議事録として公開すること。

総務省の回答



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