鎌倉市でシンポジウム「携帯基地局の条例を活用しよう」

 携帯電話基地局の設置等の前に、周辺住民から意見を聴くことなどを義務付けた条例が今年4月1日から施行された神奈川県鎌倉市で、この条例をどう活用すべきかなどを考えるシンポジウム「携帯基地局の条例を活用しよう」が7月4日開かれました。会場の、鎌倉商工会議所大ホールの定員約160名が満席になり、関心の高さがうかがわれました。主催は「電磁波を考える会」。

 条例は、携帯電話基地局の設置等の際に、事業者があらかじめ市へ計画を提出し、近隣住民への説明を行うことなどを義務付けています。このような条例は全国で2例目(1例目は福岡県篠栗町)で、東日本および市では鎌倉市が初めてです。
 シンポジウムでは、沖縄県の新城哲治医師らが、自宅マンションへの携帯電話基地局設置後に、自分を含め大勢のマンション住民にさまざまな症状が出て、撤去後にその大部分が消失したという、4月に開かれた院内集会(当会報64号参照)と同様の報告をしました。
 次に、環境ジャーナリストの加藤やすこさんが、電磁波過敏症について海外での対応や、国内の発症者を対象に行ったアンケート調査について、やはり院内集会とほぼ同様の報告をしました。
 市民科学研究室代表の上田昌文さんは、携帯基地局問題の解決のために、科学的および社会的にどのような課題に取り組むべきかについて話しました。

鎌倉市条例の意図
 続いて、鎌倉市条例の本題に入りました。一昨年9月に市議会に条例制定を陳情した「携帯基地局の電磁波を考える鎌倉の会」事務局の保坂令子さんは「予防原則に立った施策」と「住民が安心して暮らせる環境を作るために自治体ができることをすること」を求めて陳情したと説明。しかし、国の基準が不十分であることを前面に出して事業者に規制をかける条例の制定は現実には難しいことから、「地域における紛争の未然回避」を着地点として条例化にこぎつけたと報告しました。

鎌倉市条例の優れている点
 そして保坂さんは、鎌倉市条例で特に評価できると考えている点として、次を挙げました。

  1. 対象とする基地局の高さの規定がない=小規模な基地局も対象に含まれる
  2. 事業者に設置計画の周知と紛争の防止の責務を課した範囲に「地縁団体」(自治体・町内会等)を含めた=基地局の高さの2倍以内の土地または建築物の所有者等(いわゆる「近隣住民」)に限定されず、しかも対象が明確である
  3. 子どもへの特別の配慮=「近隣住民に学校、児童福祉施設その他の施設で規則で定めるものの土地所有者等が含まれるときは、当該施設の管理者の意向を尊重するよう努めなければならない」(条4条2項)

条例等の問題点
 逆に、鎌倉市条例の問題点として、以下を挙げました。

  1. 地縁団体への周知について「地縁団体を代表する者」への説明(条7条1項)と規定され、説明会については「地縁団体から説明会の開催を求められたとき」に開催する(規5条2項)とされているため、代表者の対応次第では、地縁団体全員に周知されず、説明会も開かれない等の恐れがある
  2. 5月上旬に公表された「鎌倉市携帯電話等中継基地局の設置等に関する条例第2条第1項及び第8条に関する取扱い基準」第2項は、基地局の設置場所について「鎌倉市」より詳しい町名等は非公開と規定。これは採択された陳情にあった「市民の情報アクセス」という趣旨に反する

 これらの課題をクリアすること、すなわち、自治会・町内会会長のところに情報が留まらないよう制度運用の改善や、取扱い基準の改正、そして、鎌倉市条例を市の内外へ知らせて電磁波問題への関心を高めることが、条例を活かす道であると訴えました。

1件は住民合意ないまま建設
 石川寿美・鎌倉市議は、条例施行後の4~6月で事業者から8件の基地局設置の届出があり、3件で説明会が開かれ、うち2件は話し合い中で、1件は建設されたと報告。建設された1件は、自体会内での意思決定手続きがうまくいかず、反対の住民がいるのに自治会が同意した形になってしまったとして、「この条例は市民の側に責任を課した条例とも言え、市民が確かな判断をするための電磁波についてのしっかりとした情報を得られるようにすることが課題」と指摘しました。

条例の波及を
 また、「鎌倉の電磁波汚染の改善を目指す会」代表の戸谷真理子さんは、鎌倉市条例の制定後、県内外の他自治体へその影響が波及している事例を紹介しました。
 この日は、基地局問題に悩み取り組む方々が鎌倉市外からも参加していました。
 電磁波過敏症のため長野県伊那市の携帯電話圏外の山間地へ避難したAさん(中学2年)ら一家の、通学路近くに基地局が建設されることになり、Aさんは署名運動などに取り組んだことなどを報告しました(Aさんは翌日、NTTドコモ本社へ申し入れに行き、筆者も同行しました)。また、「中継塔問題を考える九州ネットワーク」事務局長の宮嵜周さんもこれまでの活動について報告。宮崎県延岡市の携帯電話基地局周辺で大勢の住民に健康問題が起こり基地局撤去を求める訴訟を起こした原告団長の岡田澄太さんも参加し紹介されていました。【網代太郎】


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