インターフォン研究のプール分析結果が発表される

 発表が4年遅れたのはなぜか
「携帯と脳腫瘍、関連確認されず」 「ヘビーユーザーのリスク明確に示唆」 一体どっちだ

 待ちに待った、「インターフォン研究」(脳腫瘍と携帯電話使用の関係を見る国際症例対照疫学研究)の最終分析(プール分析)結果が、2010年5月17日 International Journal of Epidemiology に発表されました。

 表題は「携帯電話使用と脳腫瘍リスクの関連:インターフォン国際症例対照研究結果」であり、インターフォン研究グループの署名で出されたこの最終報告は、A4版20ページの論文で、その一部を以下紹介します。
 この論文に対し、デイリー・メール紙やタイムズ紙は、「長期間携帯電話を使用すると明らかに脳腫瘍リスクを示す」と報道したのに対し、BBCテレビはほとんどその反対の内容で報道しました。英国スコットランドの新聞スコッツマンは、イスラエルの著名な研究者シーガル・セデスキー氏の発言である、「私の研究を含め、多くの研究は長期間携帯電話を使うとなにかが起こるとしている」を紹介しています。
 日本の共同通信は、「携帯で発がん、確認されず WHO機関が大規模調査」の見出しで報道し、「その結果、使用を『日常的』とした人や『10年以上』とした人の割合は、患者よりも健康の人のほうがむしろ多く、携帯使用と脳腫瘍の間の関係はみられなかった」と報じました。皆様は、以下の特集を読んでご判断ください。【大久保貞利】

携帯電話使用と脳腫瘍リスクの関連 インターフォン国際症例対照研究結果

原文:“Brain tumour risk in relation to mobile telephone use: results of the INTERPHONE international case–control study” International Journal of Epidemiology Volume 39, Issue 3Pp. 675-694.
(一部のみ翻訳)

<受理>2010年3月8日

<背景>携帯電話使用の急速な増加は、携帯電話から出る高周波電磁波が潜在的な健康リスクと関係しているのでは、という懸念を引き起こしている。

<方法>2708人の神経膠腫患者(ケース)と2409人の髄膜腫患者に対するこれとマッチした対照(コントロール)とを面接して行なった症例対照研究を13ヵ国を対象に共通のプロトコルを使って実施した。

<結果>携帯電話の通常使用者は、減少したオッズ比として、神経膠腫は[OR 0.81:95%CI0.70-0.94]であった。そして髄膜腫は(OR 0.79 95%CI0.68-0.91)。おそらく、参加バイアス(participation bias)と他の方法論的制約が関係している。携帯電話を使用してから10年以上では(以下のように)オッズ比は上昇しなかった。(神経膠腫:OR 0.98 95%CI0.76-1.26:髄膜腫:OR 0、83 95%CI0.61-1.14)。これまでの電話使用を10分位数でみるとすべての段階でORは1.0以下であり、10分位数のうち9つまでが同様にORは1.0以下である。これまでの電話使用を10分位数にした10番目の区分、すなわち1640時間以上使用した時のORは神経膠腫で1.40(95%CI1.03-1.89)、髄膜腫で1.15(95%CI0.81-1.62)である。しかし、このグループで報告された使用に関するデータには、不確かな評価がある。神経膠腫のORでは、前頭葉のORが脳内の他の葉より高く出る傾向があった。しかし、特定の葉のCI幅は大きかった。神経膠腫のORは、腫瘍のできた側で携帯電話を使用した場合の方が反対側で使用した場合より高くでる傾向であった。

<結論>総体として、神経膠腫のリスクあるいは髄膜腫のリスクの増加は携帯電話使用で観察されなかった。最も曝露レベルの高い場合は神経膠腫のリスクの増加が示唆された。しかしバイアスとエラーが因果関係解釈を妨げている。長期間のヘビーユーザーの潜在的影響はさらなる調査の必要がある。

<キーワード>脳腫瘍、携帯電話、高周波電磁波

イントロダクション

 携帯電話の使用は、1980年代の早期から中期に始まって以来、多くの国で劇的に増大した。携帯電話の使用拡大は、一方で健康と安全への懸念を伴った。1990年代後半に、いくつかの専門家グループが高周波電磁波の低レベル曝露で健康影響を及ぼすという証拠を批判的にレビューした。そして、そのグループは携帯電話の潜在的健康悪影響について研究するよう勧告した。その結果、国際がん研究機関(IARC)が1998年と1999年に実行可能な研究のコーディネートを行ない、携帯電話使用と脳腫瘍リスクの関係に関する国際的な研究は実行可能であり有益であるという結論に達した。
 そこで、携帯電話から出る高周波(RF)電磁波を、最も吸収する細胞に生じる4つの腫瘍に絞った、国際的な症例対照(ケース・コントロール)研究として、インターフォン(INTERPHONE)が開始された。すなわち、脳腫瘍(神経膠腫と髄膜腫)と聴神経腫(シュワン腫)と耳下腺腫である。ねらいは、携帯電話を使用すると、4つの腫瘍リスクは増加するかどうかをみることだ。特に、携帯電話からのRFエネルギーは、発腫瘍的性質があるかどうかだ。
 この論文は、インターフォン研究センターの全(データ)を結合させることで、携帯電話使用と脳腫瘍リスクの分析結果を提示する。携帯電話使用と脳腫瘍との関係分析は、多くのコホートと症例対照研究から報告された。この中には、インターフォンを構成する各国の研究も含まれる。しかし、多くの曝露ケース、とりわけ、携帯電話の長期間とヘビーなユーザーのケースはこの研究では含んでいない。(中略)

結論

 これは、今日まで実施された携帯電話使用と脳腫瘍リスクの関係をみる研究としては最大である。そして、10年以上携帯電話を使用している対象者の数は十分な研究である。総体として、携帯電話の使用と関係して神経膠腫リスクも髄膜腫リスクもどちらも増加しなかった。腫瘍と同じ側で携帯電話を使い、さらに曝露が最も高いレベルでは、神経膠腫リスクの増加が示唆され、髄膜腫ではむしろ減少を示唆した。そして、曝露が最も高いレベルでは、神経膠腫と耳下腺腫のリスクは使用している側に関係なく増加した。しかし、バイアスとエラーが、分析から導き出す結論の強さと因果関係の解釈の提示に制約を与えている。【訳・渡海伸】

(報道)研究は携帯電話使用を脳腫瘍に関連づける

原文:“Study links mobile phone use to brain tumours” 2010年5月16日 The Scotsman
(一部のみ翻訳)

 インターフォン研究最終報告によれば、10年以上継続して携帯電話を使うと、グリオーム(神経膠腫)と呼ばれる脳腫瘍の1タイプに顕著なリスク増大が起こるので、若者の携帯電話制限を促すよう、結論づけている。

 参加した13ヵ国のチームの一つ(イスラエル)の研究者である、シーガル・セデスキー博士は、以下のように語った。私達の研究もそうだが、多くの研究は、携帯電話の長期間使用で何かが起こることがわかっている。なぜ、安全サイドの立場から曝露制限のための簡単な方策が採用されないのだろうか。
 インターフォン研究の責任者であるエリザベス・カーディス博士は、以下のように言う。私は、(子供の)携帯電話禁止にまでは賛成しかねるが、子供の携帯電話使用を制限することには同意する。【訳・渡海伸】

解説

(会報第64号をご覧下さい)


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