東電は来年度から本格導入 スマートメーターの問題点

 国は、家庭などの電気メーターをすべて「スマートメーター」に置き換えていく方針ですが、東京電力も7月1日付で「スマートメーター推進室」を新設し(1)、来年度からの本格導入へ向けて始動しました。
 スマートメーターは通信機能を備えたメーターで、通信のために電波を送受信することから、既に導入されている米国では健康影響の訴えが出ています。
 スマートメーターについて経済産業省は、「スマートコミュニティー」を支える機器だと説明しています。同省によると、「これからは、太陽光や風力など再生可能エネルギーを最大限活用し、一方で、エネルギーの消費を最小限に抑えていく社会が必要」ですが「自然を利用した発電は天候によって発電量が変化し」「電力の消費量も、刻々と変わ」るため「家庭やビル、交通システムをITネットワークでつなげ、地域でエネルギーを有効活用する次世代の社会システム」として、スマートコミュニティーが必要になるのだそうです(2)
 スマートコミュニティーを実現するための新しい仕組みの送電網のことを「スマートグリッド」と言い、また、スマートコミュニティーに対応した設備を備えた住宅を「スマートハウス」と言うそうです。
 スマートメーターは、各家庭の電気使用量などの情報を、30分ごとに電力会社側へ発信します。電力会社は検針員が各住宅などを回ってメーターの数字を調べる手間が省けます。使用量情報は各家庭の住人自身も見られるので、節電意識を促進するというメリットも強調されています。

図1 スマートメーターとHEMS(資源エネルギー庁「スマートハウス標準化検討会とりまとめ概要(案))2012年2月

図1 スマートメーターとHEMS(資源エネルギー庁「スマートハウス標準化検討会とりまとめ概要(案))2012年2月

 将来的には、HEMS(ヘムス)という装置を介してスマートメーターと住宅内の家電や電気自動車などをつなげることが想定されています(図1)。これで何ができるかというと、猛暑日など電力供給逼迫時に、電力会社などが送信した指示をスマートメーターが受信して、住宅内のエアコンの設定温度を低くすることなどが可能になるそうです。
 HEMSとスマートメーターの間の通信手段として、経産省は「930MHz特定小電力無線」「無線LAN」「PLC」を推奨しています(3)。PLCは電気配線を利用した通信ですが、漏洩電磁波が発生します。したがって、スマートメーターと屋外との通信、スマートメーターと屋内との通信の両方で、電磁波が発生することになります。

「全ての住宅などに設置」
 政府はエネルギー政策基本法に基づき2010年6月に策定した「エネルギー基本計画」で、「費用対効果等を十分考慮しつつ、2020年代の可能な限り早い時期に、原則全ての需要家にスマートメーターの導入を目指す」との目標を掲げています。
 スマートメーターの導入がもっとも進んでいるのは関西電力で、2012年度から導入が拡大され、同年11月末で166万台に達しています(4)。九州電力は本格導入を16年度からとしていますが、既に12年度まで37万台を導入しました(5)
 他の電力会社は小規模な実証実験を経て今後、本格的に導入しようとしています。東京電力は来年度(2014年度)から本格導入を始め、遅くても2023年度までに2700万台すべてのスマートメーター置き換えを目指しています(6)。今年10月からメーター製造の競争入札を行い、初年度は190万台を入札するとのことです(7)
 四国電力も来年度から(8)、北海道、東北、北陸電力は2015年度から(9)(10)(11)本格導入するとのことです。

スマートメーターの通信方式
 各住宅などのスマートメーターと電力会社側との通信手段として、各社が予定している主なものは「無線マルチホップ」「1:N無線(直接無線)」「PLC(電力線搬送通信)」の3方式です。

図2 無線マルチポップの概念図(東京電力「スマートメーター通信機能基本仕様」2012年3月21日)

図2 無線マルチホップの概念図(東京電力「スマートメーター通信機能基本仕様」2012年3月21日)

 無線マルチホップは、図2のように、スマートメーターどうしがバケツリレーのように電波を受け渡して、コンセントレーターという携帯基地局のような設備と電波をやり取りする方式です。たとえ「小出力」であっても、まちじゅうが電波の網で覆い尽くされます。コンセントレーターと電力会社側の間は、有線の場合と、携帯電波を利用する場合があるようです。
 PLCは電線を利用して通信を行います。

図3 1:N無線の概念図(東京電力「スマートメーター通信機能基本仕様」2012年3月21日)

図3 1:N無線の概念図(東京電力「スマートメーター通信機能基本仕様」2012年3月21日)

 1:N無線(直接無線)は、携帯電話と同様、各メーターが直接基地局と通信します(図3)。コスト面などから電力会社が独自に基地局を整備するのではなく、携帯電波を利用することが多くなるようです。
 無線マルチホップ、1:N無線は、言うまでもなく電波を発生させます。また、前述の通りPLCも漏洩電磁波が発生するため、通信環境が悪化するとして日本アマチュア無線連盟が反対しています(12)。健康影響がないとは言い切れないと思います。

表1 各通信方式の比較(東京電力「スマートメーター通信機能基本仕様」2012年3月21日)

表1 各通信方式の比較(東京電力「スマートメーター通信機能基本仕様」2012年3月21日)

 これら3方式の特徴は表1の通りで、東京電力はこれらの方法を「「適材適所」で混在させて導入する」(13)とし、コスト面では無線マルチホップが有利としています。一方、九州電力は「郡部の多い九州においては、設備投資、スマートメーター早期導入対応面からも直接無線方式が有利」としています(14)

米国では健康被害の訴え
 米国では既に導入が進んでおり、スマートメーターのメーカー・PG&E社によると、同社のスマートメーターは902~928MHzの電波を利用し、電波の強さはメーターから1フィート(約30cm)で8.8μW/c㎡としています(15)。これでもかなりの強さですが、カリフォルニア科学技術評議会(CCST)は、1フィートで最大180μW/c㎡に達するとの推計を公表しています(16)
 「電磁界安全ネットワーク」のウェブサイトには、スマートメーターによる健康被害の訴えが数多く掲載されています(17)。 このことは経済産業省も把握しているようで、同省の「スマートメーター制度検討会」に提出された資料(18)には、健康被害の懸念による米カリフォルニア州での反対運動の結果、電力各社は電気利用者がスマートメーター導入を拒否する権利を認め、初期費用$75、月々$10(低所得者向け減額あり)で機械式メーターに戻せるようにしたことなどが紹介されています。

市民の管理、プライバシー侵害
 スマートメーターの問題点は、電磁波だけではありません。
 個々の住宅での電気使用量が30分ごとに把握されます。使用量の動きから留守かどうかなどの生活状況を推測でき、プライバシーの侵害です。
 「節電」「自然エネルギー活用」という美辞麗句のもとに個人の生活に介入し管理しようという動きに、危うさを感じます。 インターネットで厳重なセキュリティー対策がとられているはずの国や大企業のサイトが攻撃され、内容の書き換えや個人情報流出などの被害が後を絶ちません。電気利用者「全員」が関係するスマートメーターの通信網が攻撃されれば、大混乱に陥りかねません。
 また、通信機能を持つスマートメーターは、従来のメーターより高価です。費用は電力会社の負担ですが、現状の総括原価方式が続く限り、結局は電力料金値上げとして利用者に跳ね返ってきます。
 そもそも、自然エネルギー活用、節電などのために、スマートコミュニティー、スマートメーターが不可欠なのかも疑問です。
 当会は、引き続きこの問題へ取り組んでいきます。【網代太郎】

(1)東京電力
(2)経済産業省「スマートグリッド・スマートコミュニティとは」
(3)資源エネルギー庁「スマートハウス標準化検討会中間取りまとめ(案)」2012年2月24日
(4)関西電力「スマートメーターの原価算入について」2013年1月10日
(5)九州電力「スマートメーターの原価算入について」2013年1月10日
(6)原子力損害賠償支援機構・東京電力「総合特別事業計画」2012年4月
(7)東京電力
(8)四国電力「スマートメーターの原価算入について」2013年4月25日
(9)北海道電力「スマートメーターの原価算入について」2013年6月6日
(10)東北電力「スマートメーターの原価算入について」2013年4月25日
(11)北陸電力「2013(平成25)年度北陸電力グループの取組み」2013年3月
(12)日本アマチュア無線連盟
(13)東京電力「RFCを踏まえたスマートメーター仕様に関する基本的な考え方」2012年7月12日
(14)九州電力 前掲資料
(15)PG&E社
(16)California Council on Science and Technology “HEALTH IMPACTS OF RADIO FREQUENCY FROM SMART METERS” 2011年1月
(17)EMF Safty Network
(18)三菱総合研究所「海外のスマートメーター及び柔軟料金に関する動向」2012年3月12日

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