ローカル5Gとは何か

ITmedia「【図解】コレ1枚でわかるローカル5G」より

 「ローカル5G」という言葉を報道で見聞きする機会が最近増えてきたのではと思います。ローカル5Gとは、携帯電話事業者(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天)による5Gの全国サービスの提供の他に「地域のニーズや産業分野の個別ニーズに応じて、様々な主体が柔軟に構築/利用可能な第5世代移動通信システム」であると総務省は説明しています。
 つまり、携帯事業者がまだ5Gサービスを始めていない地域に工場を持つ会社が、その工場内で5Gを利用したいと考えたときに、自社で5G免許を取得したり、またはローカル5Gサービスを提供する業者に依頼して、工場内限定の5G基地局を設けることができるという制度です。とてもハイスペックな無線LANのようなイメージです。
 5Gは携帯電話での通話・通信による利用以上に、企業や行政機関、医療機関などによる産業、防犯、防災、医療など幅広い分野での活用が期待されていると総務省などは述べています。ローカル5Gはまさに、そのためのネットワークです。
 ローカル5Gのメリットとして総務省は、「地域や産業の個別のニーズに応じて柔軟に5Gシステムを構築できる」「通信事業者ではカバーしづらい地域で独自に基地局を設けられる」「他の場所の通信障害や災害などの影響も受けにくく、電波が混み合ってつながりにくくなることもほとんどない」を挙げています。

NEC、富士通、ケーブルTV、東京都、東京大学などが免許申請
 ローカル5Gでは4.6~4.8GHz及び28.2~29.1GHzの利用が予定されています。28.2~29.1GHzについては昨年(2019年)12月24日に免許申請の受付が開始されました。審査が順調に進めば2月にもローカル5Gが実用化される見通しだと報じられています。4.6~4.8GHzについては、今年11~12月ごろ受付予定とされています。
 報道によると、NTT東日本、NEC、富士通、GMOインターネットグループ、ケーブルテレビ最大手のジュピターテレコムなどケーブルテレビ数社、それに東京都、東京大学などが免許を申請しました。
 NEC、富士通、GMOは自社の事業所で利用する計画で、東京都は都内の中小企業などが5Gを使った事業の実験ができる施設を整備する計画、また、NTT東日本と東京大学は共同で自社拠点や東大本郷キャンパスに実証試験ができる環境を導入する計画だそうです。

将来性、必要性に疑問の声も
 ローカル5Gについては、日本はドイツと並び世界的に比較的先行して取り組みが進められているとのことです。
 一方で、ローカル5Gの将来性について疑問もあります。仕組みが難しく、コストもかかりそうなので「しばらくは利用が広がらないのではないか」「最終的には携帯大手の5Gサービスに駆逐されるシナリオも十分に考えられる」と、日経記者の榊原康氏は述べています[1]。また「ローカル5Gでなくても、単に生産ラインを無線化したいだけなら、新規格のWi-Fi6も出てくるWi-Fiや、さまざまなLPWA(低消費電力広域)ネットワークなどでも十分にやれるのではないか」との指摘もあります[2]。
 もちろん電磁波曝露による健康影響が心配です。生産効率を向上させたいばかりに、工場内をとんでもなく強い電波環境にしてしまう、というおそれはないのでしょうか。【網代太郎】

[1]榊原康「ローカル5Gは課題山積、「民主化」が遅れれば携帯大手の餌食になる」日経xTECH 2020年1月22日
[2]朴尚洙「ローカル5Gは製造業に本当に必要なのか」MONOist 2020年1月14日

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