国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、市街地、郊外、地下街の携帯電話基地局などからの電波強度の変動傾向を調査し、その結果を12月7日に発表しました。同一地域における過去(約10年前)の測定結果と比較したところ、電波曝露レベルが上昇傾向にあることが分かりました。それでも「電波防護指針より十分に低いレベル」だとNICTは強調していますが、電波防護指針を満たしても熱効果による健康影響しか防ぐことができず、非熱効果による健康影響を守ることはできないと世界中の研究者が指摘しています。
NICTは、市街地、郊外、地下街の500地点以上で携帯電話基地局などからの電波曝露レベルを測定し、統計処理して、現在(2019~2020年に測定)と、過去(2006~2007年に測定)とで比較しました。2020年時点では第5世代移動通信システム(5G)は開始されていなかったので、5G電波は対象となっていません。
その結果、市街地が郊外よりも電波曝露レベルが4倍(中央値で。以下も同じ)程度高いことが示されました(図)。この傾向は、過去と現在で変わりませんでした。
また、それぞれの地域について過去と現在の測定結果を比較した場合、市街地・郊外ともに、過去よりも現在の方が電波曝露レベルは約3倍上昇している傾向が示されました。日本の携帯電話基地局の数は2006年の約14万から2020年に約47.5万(フェムトセル基地局[1]を除く)へと3.4倍に増えました。
地下街の電波曝露レベルは過去に比べて約100倍もの上昇が示されましたが、これは、過去の測定時には携帯電話サービスが地下街の一部で利用できなかった状況が、現在では「改善」されたためとNICTは説明しています。
この研究の一部は、総務省委託研究「電波ばく露レベルモニタリングデータの取得・蓄積・活用」により行われたとのことです。
今回の結果は、5Gの導入によって電波曝露レベルがどのように変動するかを明らかにするための参照データとなるものであり、今後も長期的に(少なくとも2040年まで)測定を継続して結果を公表していくと、NICTは述べています。
[1]フェムトセルとは、半径数十メートルの狭い範囲をカバーする基地局