杉山英一さん(東京都、電磁波研会員)
カメラチェーン店で働きWi-Fiに曝露されたことなどが原因で電磁波過敏症になった杉山英一さんが、ご自身の症状や対策などについて、お寄せくださいました。
杉山さんは蓄音機コンサートや、実物史料による体験型戦争資料展などの活動も精力的に行っていらっしゃいます。
寄稿記事についての一般的な注記:寄稿記事は筆者の見解であり、当会の見解とは異なる場合があります。また、電磁波過敏症は個人差が大きく、ある発症者によって有効だった対処法等が他の発症者にも有効とは限りません。
電磁波過敏症とは?
〇人体が電線及び家電周辺の電界(電気を帯びた空間)に接触し帯電する事によって体調を崩す事。「帯電性疾患症候群」と呼ぶべきか?
〇スマートフォンや無線LAN及び携帯電話基地局の通信波によって生じる体調不良。「電磁放射線被曝障害」や「マイクロ波被曝障害」と呼ぶべきか?
症状
目の痛み、息苦しさ、倦怠感、味覚の鈍化、不眠症、思考力低下、集中力低下、頻尿、血圧が急上昇したような感触の頭の圧迫感。
発症
数年前から原因不明の体調不良があったが、2022年の4月に症状とスマートフォンや無線LANの通信と連動している事に気付いた。更にスマートフォンやデジタルカメラなどの充電の時に激しい症状がでる事に気付き、原因を確認する為電磁波測定器を購入した。測定結果に基づき同じような低周波を出すパソコンや家電、蛍光灯でも症状が出る事に気付いた。
原因
〇家電や電源コードが作り出す電界(不要輻射による電気を帯びた空間)に人体が接触し、電位差によって人体が電気を吸収して体に帯びた時に自律神経を乱す事が原因と推測している。
〇計測器を持って判った事であるが、スマートフォンやWiFiの通信に使われる通信波は電子レンジの食品過熱に使われるマイクロ波(2.45GHz帯)である。2.45GHz帯帯は、被ばくすると1秒間に24億5000万回水分子を振動させて水分を沸騰させられる性質がある。乾いた皮膚よりも常に濡れている粘膜にダメージを与えている可能性がある。
発症例
〇過度な照明、複数の通信端末とWiFiスポットが乱立する職場で発症し体のダメージが大きく休日は動けなくなった。職場は低周波だけでも300V/m前後あり過酷だった。WiFiスポットを私の定位置から離れた場所に移転したら一時的に改善した。
〇職場、家庭でスマートフォンやデジカメを充電すると発症した。その時の症状が最も重かった。
〇スマートフォンを胸ポケットに入れて携帯すると呼吸が苦しくなった。趣味の自転車でヒルクライムをする場合スマホを持っていると明らかに悪影響が出た。
〇冷蔵庫の出す電界により台所で発症した。
〇PCの作業で発症した。
〇蛍光灯、エアコン、WiFiスポットないし複数の
スマートフォンで発症するので、照明のどぎついコンビ
ニ、ドラッグストア、保冷庫の並ぶスーパー、電車の中
で発症した。
〇無線LANや通信しているスマートフォンなど通信機器があると発症するので、タブレット注文の飲食店や量販店、イベント会場、ターミナル駅でも発症した。
対応
①仕事の退職
職場が過度な照明とWiFiスポットや情報通信端末だらけで過酷な環境であることが明らかだった。まずは仕事を週5から週4に減らし体調回復を試みたが、コロナによる人員削減と同時に、接客販売がスマホやタブレット操作に集約されて体が付いて行けなくなった。その様な経緯により自分の健康を優先して20年間勤続したカメラチェーン店の販売員を辞めた。
そのほか電磁波が眼を刺激するため若い頃からのライフワークだった様々な分野での写真撮影が困難になったたため写真に関する生業を失っている。
②スマートフォンの解約
身体に剥き出しの電子レンジを身に付けている様なものである事が判明し、こんな危険なものに依存して生きたくないと考え迷うことなく解約した。その結果、倦怠感、目の痛み、息苦しさ、味覚の鈍化が劇的に改善した。後に電磁波問題市民研究会に入り基地局の建設が人々の健康を奪っている事を知り最良の選択だと思う。出来る事なら不買運動を呼びかけたい!(充電時に1000V/m近い低周波を発生させたり、通信開始時に1000mW/m2[編注100μW/cm2]近い高周波を放っている事がある(試験機iPhone7))
③医療との決別
電磁波過敏症と言う病気はない事になっている。心療内科の診察を案内され精神疾患やアレルギーのレッテルを貼って抗うつ剤や鎮痛剤漬けにされたり、その処方された薬の副作用で新しい病気になった例を目の当たりにしたため為医療に拠らない事にした。また医療と結託する生命保険に不信感をもち解約した。(コロナに向き合いウィルスやワクチンについて調べるうちに医療に対する不信感が高まったため、電磁波過敏症も同類と考えている)
治療は免疫力、代謝の強化を図り電磁波に蝕まれた体を修復し体を頑丈にする為、被曝をさけ、きちんと食事、きちんと睡眠、きちんと運動、ストレスの回避を心掛けた。心身より身心!健康で電磁波に負けない丈夫な体を取り戻す事を目標にしている。
電磁波との戦い
①自宅の電界を掌握
測定器で住居内の電界を測定し、電界の発生源と分布を掌握しながら個別に対策を立てて発生源の撤去とアース線の敷設などを実行した。
〇蛍光灯を撤去しE26変換ソケットを介して白熱電球に交換した。[編注:「E26」は電球の口金サイズの一つで、家庭で使われる白熱電球に最も多く使われている口金サイズ。コンセントに直接つけるアダプタや、蛍光灯用の器具に付けるタイプのものも販売されている]
〇電磁波の発生源になる家電(電子レンジ、炊飯器、オイルヒーター、ガスファンヒーターなど)を処分した。
〇エアコンなどのコンセントを全て抜き封印した。
〇敷地内に4本アース杭を打ち、それぞれからアース線を屋内に引いて冷蔵庫、パソコン、自分の身体、その他の低周波をアースできるようにした。
〇寝台を家の中で一番電磁波が少ない場所に移動し安眠を確保した。
②生活様式の改善
〇食生活を改善。電磁調理器を使わずガスなどの直火で調理する様にした。素材を買ってきて1から調理する習慣を身に付け、電磁放射線被曝防止の他に食生活を著しく改善した。
〇エアコンを使わない生活に移行。そもそも人類は今よりもっと過酷な環境でエアコン無しで生きてきた実績がある。やってみると意外に順応出来るというか本来の身体に戻れる事が分かった。
〇スマホやタブレットとの決別。身体に有害だと判ったので解約した。スマホを数年使っただけで漢字やスペルを忘れているので、単三電池式の電子辞書とメモ帳とペンでリハビリをしている。書く事描く事の大切さを再確認した。
③自転車の活用
電車に乗ると乗客のスマホ、車内のフリーWiFi、エアコンや蛍光灯で体調が悪化するので自転車を活用した。半径50㎞程度まで自転車で移動している。公共の交通機関を利用しなくても移動できるため変に絶望しなくて済んだ。またストレス発散や体力増強に繋がっている。
④電磁波過敏症の周知
我々が泣き寝入りしていたら世の中がかわらない。差別を恐れて沈黙した公害病患者の歴史を繰り返してはならない。
〇イベント(蓄音器の演奏会、講演など)で、スマホの消灯、充電の中止を呼びかけ危険性を啓蒙する。
〇個人商店で食材を購入する時、自らが電磁波過敏症で過度な照明や空調のスーパーでの買い物が出来ない事を説明し、個人商店で良い仕事されている店主や従業員に感謝の気持ちを伝えている。
〇職安、東京都の就労センターや役所で手続きをする際にも電磁波過敏症である旨を告げ、配慮を求める様にしている。
〇電磁波過敏症を詐病だとか勘違い症だと笑う輩には、その輩のスマホを測定器で計測し、危険な数値であることを説明しながら「お前の種は枯れている!!」と捨て台詞を浴びせている(笑)。
これからの展望
①健康に留意してしぶとく生き残る。サバイバルだ!どんなにミジメでも生き続けないと世間は気付かないし、世の中を変える切っ掛けにならない。絶望して死んだり沈黙をすれば、電磁波過敏症者の命は技術革新の為の「捨て石」にされてしまう。
②自分の身体と向き合う。真実は未来の人にしかわからない。電磁波過敏症が日本でも学術的に体系化されて詳細が明かされるまで何年、何十年も掛かる。それまで待っていたら死んでしまう。マスコミが報道したり、役所が安全基準を制定して号令を出す前に自分で判断して生き残る選択を積極的にしなければならない。
③国策による原子力や再生可能エネルギーによるエネルギー政策が人類の健康を蝕むものだという事を訴え続ける。テレビコマーシャルや報道によって我々は電気依存症になり、自ら進んで電気の大量消費者になる様に仕向けられている事を一人でも多くの人々と共有する。
④スマートフォンやタブレットなど通信端末の利便性と表裏を成す危険性を広く啓蒙する。
まとめ
先日、東京都の就業支援施設を利用したときスマートフォンの提示を求められた。担当者とスマートフォンで繋がる仕組みになっているのだ。もちろん電磁波過敏症の私はスマートフォンを持っていない為その「恩恵」が受けられないのだが、無理をしてこの社会の仕組みに合わせれば間違いなく私は病んで下手をすれば死んでしまうだろう。だから合わせない生き方を模索して生きねばならない。合わせられない人間の為の制度を求めなければならない。
私は、その生き方を先人の知恵に求めた。要は生活家電が普及する以前の生活を再現する事にしたのだ。ご飯は直火で炊く。食材を買ってきて自分で1から食事を作る。例えば豚バラ肉をブロックで買ってきて塩漬けにし、その後乾燥させて保存する。食べる直前に水と酒でとろ火で煮て下ごしらえをする。出汁の効いた煮汁は月桂樹の葉を入れてぶつ切りの野菜と煮込めば極上のスープになる。食生活が物凄く良くなった。そう実感するとお洒落で高級そうなパッケージに包まれた無印良品の食材も宇宙食?軍隊のコンバットレーションと同じ類の単なる代用食にしか見えなくなった。
我々が享受していると思わされている「便利さ」や「豊かさ」はその程度かもしれない?と感じる様になった。それを実感させてくれたのは電磁波過敏症だった。雨にも負けず風にも負けず東に電磁波過敏症に苦しむ人が居たならば、「スマホが無くても豊かに生きられる」と告げ、西に経済最優先で基地局の増設を訴える議員が居たならば「愚かな事だから止めろ! 間接的に人殺すことになる」とたしなめ、南に電磁波過敏症で働くのが困難になって追い詰められた人が居れば「命が最優先だ! 逃げろ! 生きろ!」と背中を押す。そんな人間になれたら良いなぁと思う。