家電協会が家電製品から発生する電磁波の測定結果を公表

 2014年3月、家電協会が家電製品から発生する電磁波の測定を行い、その測定結果をホームページ上に公表した。
 家電協会では2007年にも、同様に家電製品から発生する電磁波の測定を行い、その結果を公表している。それから7年近くが経過し、その当時から家電製品も大きく様変わりしている。家電協会が新たに測定した理由は、上記のような理由に加えて、2007年の測定は国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドライン(1998)に基づいており、その後、ガイドラインの見直しを行い、新たにガイドライン(2010)が公表されたため、それに基づいて再度電磁波の測定を行い公表したものだ。
 そこで、まずガイドライン(1998)とガイドライン(2010)のどこが違うのかを見ておきたい。
 ざっくり言うと、1998年のガイドラインでは一般公衆に対する磁界の制限値は50Hzでは100μT(1000mG)で、60Hzでは83μT(830mG)であったが、2010年のガイドラインでは50Hz、60Hzともに200μT(2000mG)になった。つまりは制限値が上がったのである。

「適合している」という結果は当たり前すぎる

 さて、この背景を踏まえて「平成25年度 家電製品から発せられる電磁波測定(10Hz~400kHz)調査」を見てみよう。

家電製品から発せられる電磁波測定結果(代表製品)/製品別ICNIRPガイドライン(2010)値に対する測定結果

家電製品から発せられる電磁波測定結果(代表製品)/製品別ICNIRPガイドライン(2010)値に対する測定結果

 専門的な説明やより詳しく知りたい人は、ホームページを参照していただくとして、何がポイントであるかを考察したい。
 測定した家電製品は冷蔵庫や液晶テレビ、IH調理器、LEDランプやインバーター式蛍光灯など多種多様である。その測定結果であるが、測定した家電製品すべてで「いずれもガイドライン(2010)に適合している結果であった」とされている。
 これは当然の結果である。逆にもし適合しないとなると大問題である。
 というのも、ガイドライン(2010)では200μT(2000mG)以下であれば適合しているとされるので、かなり特殊な家電製品でない限り、その値を超えることはないと考えられる。筆者は電磁波測定を担当しているが、一度だけ100μT(1000mG)を超える家電製品にお目にかかったことがあるが、電源を入れたほんの数分で気分が悪くなった記憶がある。アメリカ製の古い空気清浄機であった。100μT(1000mG)でもそうであるから、その2倍の値は想像すると恐ろしい。

数値ではなく、%で示す表

 この公表結果には家電製品の名称と測定した測定値を記した表がある。ただし、測定値は実際に得られた数値ではなく、ガイドラインに対する%で示している。これもざっくり言うと100%が200μTに相当するそうだ。この件に関しては今回測定した協会の担当者に確認した。
 周波数毎に基準値が違うので、こうした表になったとしているが、○○μTや○○mGと数値を示すより、○○%と割合を示す方が、電磁波が小さいことを強調でき、値を小さく見せるには有効な方法である。
 その表には0.2%にラインがあり、それ以下は測定が難しいとして0.2%以下は、<0.2とされている。0.2%は4mGに相当する。いくつかの家電製品が4mG以下であると表は示している。
 表を見ると、電気カーペット、電気マッサージ機(手持ち型)、温水洗浄便座、電動歯ブラシ/充電式(非接触)が高い値を示している。高くてもこれらは「ガイドラインに適合」している。

高周波電磁波も測定すべき

 この家電協会の測定の公表は、10Hz~400kHzを対象としている。しかしながら、これ以外の高い周波数の電磁波を発する家電製品もある。いや、むしろそのような家電製品が増えている。今回、家電協会は400kHzを超える高い周波数の電磁波測定はしていない。測定していない高い周波数を発生する家電製品のなかには、比較的高い電磁波を発生しているものもある。今回測定された家電製品のなかでも、IH調理器、事務所用をはじめとしたインバーター蛍光灯器具などはむしろ、400kHz以上の高周波の方が高い。温水洗浄便座は表にも高い値が示されているが、400kHz以上の高周波も高い場合が多い。
 筆者が電磁波を測定し始めた頃は、電磁波測定の対象は家電製品、配電線、高圧送電線が主で、家電製品では電子レンジ、冷蔵庫、ブラウン管式テレビなどが強い電磁波を発生するものであった。しかし、ここ数年の測定では、低周波は小さくなっている。テレビはブラウン管から液晶になり、低周波の発生は小さくなった。また、照明はグロースターター式蛍光灯からインバーター式の蛍光灯になり、高周波の発生が大きくなっている。つまり家電製品から発生する電磁波を測定するなら、10Hz~400kHzの低周波だけでなく、高周波も測定すべきであると思う。【鮎川哲也】

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