当会(電磁波問題市民研究会)主催による「スマートメーター強制をやめさせる院内集会」が4月25日、衆議院第2議員会館で開かれ、90名が参加しました。2部構成で、第1部は、スマートメーターとは何か、その問題点、トラブル事例について確認し、被害を受けた3名の方々が報告。その後の第2部では、経済産業省資源エネルギー庁、総務省電波安全課、総務省消防庁、東京電力パワーグリッド株式会社(以下「東電」と言います)の担当者との質疑応答を行いました。経産省、東電とも概ね「スマートメーターを拒否する需要家には丁寧に説明してご理解をいただく」という従来の立場を繰り返すという対応でしたが、次の通り、いくつかの注目すべき点もありました。
- 経産省、東電とも、すべての需要家(電気を使う消費者)にスマートメーターを設置すべき法律はないことをあらためて確認。
- 経産省は、スマートメーター設置を希望しない需要家への対応について検討することを約束。
- 東電は「顧客の拒否にも関わらず、スマートメーター(通信機能付き)を設置したのはゼロ件(ただし、一部工事会社が誤って設置を行ってしまったケースは除く)」と驚きの回答。
3.については、スマートメーター以外の選択肢を認めていないのだから「強制」に他ならないのですが、法律がない以上「強制している」と東電が自ら言うこともできず、「強制していない」と詭弁を弄しているのでしょう。私たちとしては、この回答も利用して、スマートメーター設置を求められたときに「東電本社のマネージャー(課長)が『強制しない』と言っています」と突っぱねれば良いことになります。
当会は、この院内集会で得られた成果も生かして、スマートメーター強制をやめさせるまで、粘り強く運動していきます。以下、集会の模様をご紹介します。
第1部の冒頭、この集会開催にご協力いただいた大河原雅子衆議院議員(立憲民主党)から「参議院議員だった時代に、電磁波の問題で院内の集会なども持たせていただきました。その時も、健康被害で本当に集会に出るだけで大変という方々がおられました。今回スマートメーターのことを私もうかがって本当にビックリいたしました。原発ゼロ社会を作るために再生可能エネルギーに変えていきたい、電力会社を変えたら、自分の健康に被害が起こる、こんなことが起こってはならないわけで、スマートメーターでなくていいんだということをもっと世の中の方たちと共有できれば、強制はさせないということをハッキリさせていただきたいと私自身も思います」等のごあいさつをいただきました。
「メリット」とデメリット
次に、当会事務局の網代太郎が、スマートメーターとその問題点について講演。スマートメーターを導入する「メリット」として、電力会社のコストカット、きめ細かい料金設定による節電の促進、電力使用データを利用した新ビジネスなどが挙げられており、一方で、電磁波曝露、プライバシー情報漏洩・監視社会化、火災、大規模停電の恐れなどのデメリットがあることを説明しました。
続いてジャーナリストの斎藤貴男さんが、スマートメーターによる監視社会化の問題を中心にご講演。
次に当会事務局長の大久保貞利が、当会に寄せられたスマートメーターによるトラブル事例を紹介。自宅の新築、改築、エコキュート設置、アンペア変更など、あらゆることをきっかけにメーターをスマートメーターが換えられてしまうことなどを指摘しました。
つらさ、不安、絶望
そして、スマートメーターで健康被害を受けた3名の方々が報告してくださいました。
大阪府からご参加くださった東麻衣子さん(アナログメーターの存続を望む会)は、職場での受動喫煙をきっかけに化学物質過敏症(MCS)になり、その後電磁波過敏症(EHS)にもなりましたが、通院などを通して症状は落ち着いていました。しかし2015年2月、知らない間に自宅にスマートメーターを設置され、夕方仕事から帰宅した途端にめまいなどがしたため、調べたところ、玄関のポストに「スマートメーターに交換しました」とのチラシが入っていました。東さんはその時の気持ちについて、落ち着いて住めるはずの家で襲われた症状による「つらさ」、せっかく過敏症が改善したのにどうしたらいいんだろうという「不安」、そして関西電力に電話した時に「アナログメーターの在庫がない」と言われた時の「絶望」という言葉で表現しました。東さんは関電と交渉して自宅と両隣のスマートメーターを交換させて、避難先の実家から自宅に戻ることが出来ました。
東さんが自宅マンションで高周波電磁波を測定したところ、アナログメーターのそばの0.017μW/c㎡に対して、スマートメーターは0.14μW/c㎡だったとのことです。
影響があると思っていなかったが
次にご報告くださったのは、東京都目黒区で「はなちゃんカフェ」というMCS発症者の憩いの場を提供する活動をしている伊藤香さん。ご自身もMCSですが、スマートメーターについては鉄の扉の中に入っているし、測定しても携帯電話と同じくらいの電磁波しか出ていなかったので、それほど身体に影響があるとは思っていませんでした。
ところがある日のこと、室内は化学物質対策・電磁波対策を施しているにもかかわらず、急に耳鳴りと頭痛、めまいがするようになりました。翌朝、外を調べてみると隣家が前日スマートメーターに変更されていたことが分かりました。スマートメーターを取り付けた直後から症状が出ていたことが分かりぞっとしました。隣家の許可を取ってスマートメーターからの電磁波を遮断するようにガリバリウム鋼板を立てたらすぐに症状が治まりました。伊藤さんはなぜスマートメーターの電磁波で症状が出るのかを過敏症を診療する医師に質問したところ「MCSになって、脳の受容体が活性化した状態なので影響があるのです」と言われました。
実家はスマートメーターになっていましたが、実家のお父さんを伊藤さんが介護する必要があったことから、実家のスマートメーターについても東電と3カ月交渉して、アナログメーターに交換させました。その際、東電と文書でいくつかの確認事項を取り交わしました。お父さんはそれから約1年3カ月後に亡くなられました。
その後、昨年暮れに伊藤さんが実家へ行き10分ぐらいしたらめまい、耳鳴り、耳がふさがった感じがしました。母に尋ねたら、東電の関連会社から「電気料が安くなるので50A(アンペア)を30Aに変えないか」と勧められ、アンペアを変えたらスマートメーターにされてしまったとのこと。伊藤さんが電話で「文書もあるのにひどい」と東電に抗議しましたが、東電はなんだかんだと言ってアナログメーターへの交換を拒み続け、現在でも交渉が続いています。過敏症でない実家のお母さんも、スマートメーター後から、めまい、頭痛、睡眠障害が出ており、心配です。
チラシを入れた日に交換
被害者の3人目は、当会事務局で、やはりEHS発症者の鮎川哲也です。昨年7月6日、朝早く自宅を出たあと、その日のうちにスマートメーター交換を知らせるチラシの投函と交換作業が行われ、夜遅く帰宅した時の違和感でスマートメーター交換に気付きました。翌朝から抗議してアナログメーターに再交換させた顛末を綴った電磁波研会報第107号の記事が集会参加者に配布されたので詳しくはそれを読んでほしいと鮎川さんは述べ、「東京電力グループ企業行動憲章」が掲げている「人間の尊重」「透明な事業活動の推進」などに反していると批判しました。
第2部では前半は経産省と総務省、後半は東電と話し合い、当会が事前に提出していた質問と要望に対しての回答をいただいた後、質疑応答を展開。会場の参加者からも多くの質問、意見が出され、スマートメーターを強制する姿勢を変えない経産省、東電、電磁波で苦しむ方々を認めない総務省などに対して怒りの声が飛びました。
集会には、仁比聡平参院議員(共産党)の秘書、森ゆうこ参院議員(自由党)の秘書の方々もご参加くださいました。また5月4日付『赤旗』で取り上げられました。【網代太郎】